タグ別アーカイブ: ガラパゴス

2010-12
31
11:58:17
勝手に添削 – iモードが世界制覇できなかった本当の理由


iモードが世界制覇できなかった本当の理由

事実を正しく指摘してはいるけど、「本当の理由」ではないと思う。

「事実は正しく指摘」しようよ。
結論は、元の中島氏の結論も含めて携帯関係クラスタやらそうした関連記事ではさんざん出ている指摘なので特に異議もないのだけど、その「前振り部分」の事実誤認なのか無知なのか分からないが、事実無根の記述がこんなに短いエントリーなのに三つ(数え方により四つ)もあるよ。
はてブとか読む限り、勘のいい人たちは「何かおかしくね?」とちゃんと気付いてるみたいだけど、言葉のまま信じ切っている人も多いみたいなので、きちんと添削しておく。

ガラケー端末も遙か昔からTCP/IPぐらいサポートしている

WAP1.0の前世紀ならいざ知らず、少なくともiモードはその登場時からTCP/IPベースの携帯端末だった。 小飼氏が言っているのはその10年も昔のWAP1.0と取り違えたような話だ。
というよりWAP1.0のプロトコル・ゲートウェイ的なダサイ実装が嫌だったのでそもそも独自にiモードをTCP/IPベースにして開発した、というのは有名な話だ。
この端末からゲートウェイからもちろん外部のインターネットまで通信層をTCP/IPでデザインするというというアーキテクトはその後のWAP2.0へそのまま踏襲された(つまり現在世界的に見ても『IPアドレスが割り振られない』携帯端末はまず存在しない)。
そもそもガラケーでも問題なくSSLが出来ている(完全なピア・ツー・ピアという意味)時点でTCP/IPをサポートできていないはずが 無いのだが。
なおこれはEZWebやYahoo!ケータイでも(初期にはWAP1.0な時代があったかも知れないが、そこの歴史は僕には分からない。識者の教示を求む)同じことだ。

参考: WAP2.0で何が変わったのか

別にiPhoneだからと言って「グローバルIP」とは限らない

あいまいな論の文章なので判断しにくいのだけど、小飼氏の論やツイートを見ると「iPhoneにはグローバルIPが振られ、外部からも自由にアクセスされ得る」から「終端として主導権を握れる」のが他の端末との大きな違いとなった、とも読める。つまりグローバルIPを自由に使える点が重要だったという意味だろうか(正直こうしてまとめていても僕にはよく分からない)。
仮にそうだとして、日本ではソフトバンクのいわゆる「panda-world.ne.jp」と呼ばれる「iPhone専用網」でサービスされておりここではグローバルIPが割り振られる。IPがグローバルかプライベートかは通常は分からないが、JailBreakしていれば自機のIPが把握できるアプリもある。
しかし世界的にはそんなキャリアだけではない。
例えばこちらの資料をみれば一目瞭然だ。世界的にはグローバルIPを使用するキャリア、 プライベートIPを使用するキャリア(つまりキャリアグレードNATを導入しているキャリア)が混在している。

APN Settings for iPhone 3G | The iPhone User Guide

これらの国ではiPhoneの他の機種に対する魅力は無いのだろうか。ノキアは悠々自適なビジネス環境を生きているか。そんなことは無い。
更に言えば、そもそもスマートフォン網だのガラケー網などと分かれている(アクセスポイントが分けられている)国の方が珍しいので、従来の携帯端末でもグローバルIPが割り振られる場合も同様にある。
「日本のガラパゴス現象」を主題にしているのは理解しているが、しかしその論では「海外においてもiPhoneがスマート」になっている理由付けにはならないだろう。
論理的帰結として、iPhoneはまたはスマートフォンとはそうした「外的要因」からは分離されたところにその存在意義や魅力があると考えるべきだろう。

なお僕には詳細は分からないのだが、「そもそもiモードにも外部接続を受け付ける仕組みはあるよ?」という指摘もある。

定額データ料金はiPhone以前からずっと存在している

これまたあいまいな文章なので判断しにくいが、「iPhoneは定額データ(=常時接続)が無ければこれほど浸透しなかった」は自明としても「定額データを導入したからiPhoneが浸透した」なら成り立たない。既に多くの人が理解するようにiPhone以前の何年も前からガラケーで定額データは一般的だったからだ。
今に始まった経緯では無いのだから「iPhone『だけ』を特別なものにした」論の論拠としては甚だ疑問だし、では何故ガラケー(やその他従来端末)がiPhoneになれなかったかの論としては成り立っていない。

ガラケーがiPhoneになれなかった訳もしくはキャリアがiPhoneを企画できなかった理由

このブログでは、あるいはTwitterでも散々ツイートしているし長くなる話なのでかなり簡単にまとめるが、僕自身は「肝」はいわゆる固有端末ID(uid, X-UP-SUBNO、X-JPHONE-UIDなど)をベースにしたモバイルECが想像以上に成功しそれ以外の方向性に舵を切る必然性がキャリア・メーカーともに無くなったからだと思っている。つまり「イノベーションのジレンマ」かも知れないし、中島・小飼両氏の「結論」も別に異議はない。それ故にキャリアはメーカーを飼い慣らす(実は飼い慣らしたかったのはユーザーだろうが)必要があったしメイドにもならざるを得なかった(つまり両氏の「結論」は「結果論」)、というのが本質論だと思っている。
もし興味があるのなら以下の以前のエントリーも参照して欲しい。

日本のケータイWEBはどうしてこんな仕様になったのか
結局SIMロック論議もオープンプラットフォーム構想も端末IDの話に尽きるのかも知れないなぁ
Appleは本当に垂直統合なのか – 日本の携帯キャリアとの違い
ガラケー機能は須くクラウドを目指せ

ともあれ。エンジニアたる者、事実に立脚せず思い込みだけで論陣を張るなど以ての外だし、知らないことは知らないでよいのではないか。その上で知りたいのなら(議論したいのなら)きちんと新たに学べばいいだけだ。これはネットだけでなくリアルにおいても「技術屋」としては最低限の矜持である。

ROCA,  the mere engineer.

2010-11
23
22:12:27
w3cもケータイ認証には困惑している件


以前Twitterでもツイートしてたんだけど一部誤解があったのでこちらでまとめてみる。

Global Authoring Practices for the Mobile Web (Luca Passani)
http://www.passani.it/gap/

上記をもって「w3cが個体識別番号に駄目出し」としていたんだけど、多少事情が違った。
実は上記には元になる対象文書がある。それがw3cのベストプラクティスだ。

Mobile Web Best Practices 1.0
http://www.w3.org/TR/mobile-bp/#d0e1925

上記のGlobal Authoring Practices for the Mobile Web(以下GAP)はこのw3cのベストプラクティス(以下MWBP)への一種の「アンチテーゼ」として書かれている感が強い。
それらの比較についてはこちらのページが詳しい。
そのほとんどはモバイルWEBでの実装方法についてなので本稿の趣旨とは外れる部分も多いのだが、例えばMWBPではCookieについてこのように解説している。

5.4.14 Cookies
[COOKIES] Do not rely on cookies being available.
5.4.14.1 What it means
Cookies are frequently used to carry out session management, to identify users and to store user preferences. Many mobile devices do not implement cookies or offer only an incomplete implementation. In addition, some gateways strip cookies and others simulate cookies on behalf of mobile devices.

(参考訳)
[Cookies]Cookieが必ず使えると考えるな
Cookieはよくセッション管理やユーザーの特定に使用されるが多くのデバイスでは利用できなかったり正しい実装がされていない。更にはゲートウェイによってはCokkieを削除したりエミュレーションしている。

これだけだ。ベストプラクティスと言いながら実は解決策は何も提示していない。

これに対しGAPは非常に現実的だ。

Practice: If an application only relies on cookies for improved service, but is not essential to the well-functioning of the service itself, then cookie support can be safely assumed.
If cookies availability is essential to the correct functioning of the application (typically for supporting user sessions), then alternative mechanisms should be assumed. URL-Rewriting is the common way to by-pass the lack of cookie support ([URLREWRITING]).

(参考訳)
アプリケーションがCookieのみをベースにできるならそれは安全と見なしていいだろう。
Cookieの利用が機能の要であるならその代替機能も必要とされるだろう(訳注:恐らくCookieが使えない場合のことを言っている)。URL-RewriteはCookieの代替に使用できる共通した方法だ。

そしてよく知られたセッションIDをURLへ付加しURL-RewriteでCookieと共存する方法を述べているのだが、その最後でこのようなことを提示している。

Finally, in many cases, operator gateways and independent portals attach unique headers and values to each HTTP request, such as phone number headers (x-wap-msisdn, x-nokia-msisdn, x-up-calling-line-id) and subscribeer id headers (x-up-subno). The headers can be exploited as unique keys to track users and the foundation for session management.
Some detailed techniques to track users are presented here [TRACKUSERS]

(参考訳)
最後に、多くの場合キャリアのゲートウェイなどは特別なHTTPヘッダーを付加する。x-wap-msisdn, x-nokia-msisdn, x-up-calling-line-id, x-up-subnoといったもので電話番号や契約者番号を示している。
これらのヘッダーをユーザートラッキングのためのユニークキーにしたりセッション管理のベースにすることは脆弱性をもたらしかねない

ここでいうX-UP-SUBNOとは日本ではauで利用されているサブスクライバーIDと同じだ。当然言及はないが、docomoのuid、SoftbankのX-JPHONE-UIDも同列と考えていいだろう。つまりこのコンテキストにおいては「日本のガラケー界は根本から駄目出しをされている」と言えるだろう。

たとえ米国でもディベロッパーがユーザーの特定をあまり行っていない、そういうニーズが無いとは思わない。
ではw3cが何故ここまで踏み込んだ言及が出来ないかは幾つか理由もあると思うのだけど(個別製品への言及は馴染まないとか。X-UP-SUBNOはクアルコムOpenwaveのWAPゲートウェイでの仕様である)、大きな理由として「ベストな方法が考えつかなかった」という点も大きいだろう。
米国ではそもそも個体識別IDを送出しているキャリアばかりではない。つまり共通した手法として利用できる環境ではない。またCookieに対応する機種や環境も(日本と同じく)100%では無いようなので結局のところよい方法が示せなかったのではないか。

一方でこういうテクニカル文書もある。ユーザーをトラックするためのTIPSという感じだが 詳しくは参照してもらうとして、日本での脆弱な「ガラケー界」を見ている者としては少し口出ししたい気持ちにもなる。
つまりは問題ではあるがよい方法が見つからなくて複数の手法を組み合わせる、または端末の特性によって切り替えるしかない、というのは日本と同じ状況とも言えるかも知れない。
かくもモバイル環境(あえて言えば従来までのモバイル機器と環境) でのユーザートラッキングや認証については米国(あるいは世界)においても共通した手法は確立されていないし誰もが困惑しているということになるではないか。

翻って日本だ。幸い(?)日本の「ガラケー界」はベストプラクティスならぬ「バッドプラクティス」の宝庫だ。
しかし見方を変えればそれはベストプラクティスの種の宝庫とも言える。
こうした情報や経験が自由に交換され、国際的に包括されたベストプラクティスが熟成される環境が何とか作れないものか。そうした貢献が出来ていない点でも日本は「ガラパゴス」と呼ばれるのだろう。

(追記 2010/11/25)
“can be exploited..”について、コメント欄でも「単に使用できると言っているだけでは」との意見を幾つか頂いていました。
個人的にも気になったので、筆者であるLuca Passani氏へ直接メールして聞いてみました。以下がその最初の返信です。

(悪意されうると言いたかったのか?との質問に対して)
not really. I just meant that, if a developer needs to track users and cookies
are not available, other headers are an option.
Regards
Luca

との返答でした。
ということで、まずは「脆弱性になり得る」との参考訳を示したことについてお詫び申し上げます。
Passani氏とはその後少し話をして、僕からは日本での簡単ログインという方法が脆弱だと言われているんだよと伝え、彼に(恐らく彼が知る限りの)海外ではどのように捉えられているか尋ねたのですが、
「プライバシーの問題は特にヨーロッパ(彼はローマ在住の恐らくはイタリア人)では問題視される。但しオペレーターはパートナー(恐らく日本における公式サイトよりも厳しい業務提携先と推測)にしか『電話番号』は通知していないし、パートナー以外はIdentifier(例えばX-UP-SUBNOなどの個体識別番号)しか受け取れない」とのことでした。
電話番号というのは多少驚くところですが欧米(他の地域は言葉の問題でよく分かりませんが)では一部のキャリアではパートナーへのサービスとして行っているようです。また個体識別番号の取り扱いについては全く意に介していない様子でもありました。これはそもそも日本での「簡単ログイン」やセッション管理としての利用は一般的ではないため逼迫した問題化していないからだろうと推測します。
以上より、本文については「日本のガラケー界は特に興味も持たれていなかった」として訂正しご解釈下さい。
(であれば”can be exploited”なんて微妙な表現しないでよー、とは思いますがそれはそれとして)

ただ付け加えると、彼の経歴を見ると分かるのですが、実は長年Openwaveでエンジニアとして働いていた人物でもあります(現在はとある企業のCEOのようです)。つまり元々のX-UP-SUBNOを生み出した会社です(その他の通知ヘッダー類についても)。故に個体識別番号のプライバシーやセキュリティ問題について聞くのはそもそも野暮だったのだろうというのが印象です。

最後に、はてブのコメントなども見て多少気になったのですが、現時点において、ではモバイル認証によい方法がないのかと言えばそれは違います。単にCookieを使えば良いだけです(Passani氏も指摘している通り)。これは日本でももちろん同様です。
但しCookieが全面的には利用できないというある意味限定された環境下でのプラクティスの話と言うことになりますので誤解無きようにお願いします。
また個体識別番号の取り扱いについては国や地域で状況やプライバシーへの考えなども違うので一概には言いにくいかも知れませんが、しかし日本での経験が有意義なものに転嫁できるはず、という点はやはり変わりないだろうとも思います。
今回は相手が悪かったところもあるのですが(笑)、逆に如何に日本の実情が知られていないか伝えられていないかと言うことも肌で感じられたので、そうした取り組みが業界全体で行われるなら喜ばしいことだし重要な貢献であろうと思います。
以上、ご報告まで。

2010-05
23
13:08:37
「ガラパゴス・ケータイ」と呼ばせたくない人々


時々このネタがTwitterのTLで流れてくるので。
よくスマートフォンに対して、「ガラパゴス・ケータイ」「ガラケー」と従来の日本のケータイを呼ぶべきではない、と主張する人たちに出くわすことがある。曰くその理由は「従来の日本ケータイへの蔑視だ」「語源のガラパゴスは単なる地名なので言葉として相応しくない、失礼だ」などというものだ。
しかしそうした主張に違和感を僕は感じるしそうした人々は本質論が得てして出来ていない。

「ガラパゴス」という言葉がささやかれ出したのはいつ頃からだったか。
僕もはっきりした記憶は無いが恐らく使われ出したのは三年ほど前からだったのではないか。
これもはっきりしないが、僕自身の感触では当時海外製携帯電話を国内に持ち込んで好き好きに弄っていたユーザー層が自分たちで持ち込んだ携帯を様々な制限で自由に利用させない日本の携帯環境と、かなり自由度の高い海外の環境の差にあきれて、外界と途絶したという意味で「ガラパゴス」と呼び出したのが最初ではなかったか。
元々そこには「日本国内で独自に異常進化した」といういい意味は含んでいなかったような気がするが、それは他の人々が語源の意味や「日本の携帯の進化具合は素晴らしい」と考える人々によって 後から追加されたように思う。

「ガラパゴス・ケータイ」や「ガラケー」はそういう意味では自国環境を憂いた自虐的な「蔑称」であろう。しかし何故それを使ってはいけないのか、自己規制・自粛しなければならないのか、さっぱり分からない。
何故ならそれほどまでに日本の携帯環境は非難され問題化されなければならない点を含んでいるからだ。

垂直統合モデルによる業界ぐるみのカルテルとも言える仕組みは競合他社を結果的に排除し競合の参入を阻んでいる。キャリア各社はこうしたモデルの崩壊を恐れ、結果的に自由度が低く競争が発生せず消費者に不便を強いている。
契約者識別IDに代表されるようなセキュリティやプライバシー問題の存在もある。10年の昔の時代遅れの技術が未だに購買モデルという重大な箇所に使用され続け、問題点や脆弱性を常に指摘されながらキャリア各社は頬被りをして問題解決のそぶりさえ見せない。
強制的なSIMロックやアクセスポイントを意識的に隠蔽しユーザーに自由に端末を使わせず全ての利用を自分たちの管理下に置きユーザーの利用の自由を阻害する。
など。

「ガラパゴス・ケータイ」や「ガラケー」とはこうした問題点を明確に言い表すための素晴らしい「発明」であったと今となっては感じている。まさしく如何に日本は多くの海外事情に比べて「異質で消費者を馬鹿にしているか」を示す名ワードである。
そういう思いがあるから僕は 「ガラパゴス・ケータイ」「ガラケー」を積極的に使う立場だ。

一方で「ガラパゴス・ケータイ」や「ガラケー」を使うべきでない、と訴える人々は上記をどう捉えているのだろう。
僕には知る由もないが、仮に問題点を理解せずに「蔑称は使うべきではない」という耳障りのいい話に流されているのだとしたら、ぜひ上記の問題に触れて自分でどうあるべきかもう一度考えてみて欲しい。
ガラパゴスと呼ばれる垂直統合モデルがどんな問題を引き起こしているか、拙作で恐縮だが以前こんなエントリーを上げたことがある。問題の一部かも知れないが概要は理解できるはずだ。
契約者識別IDは利用者のプライバシーを蔑ろにし今日では全く歓迎できるものではないが未だに日本の携帯業界は採用を続けている。海外ではこのような方式はほぼ採用しておらずまさしくガラパゴスな好例である。問題点については(技術的な部分が多いが)高木浩光氏の有名なエントリーに詳しい。
SIMロックやアクセスポイントの問題については数多くの問題点を指摘したエントリーがネット上にはあるので検索して欲しいが、拙作ではアクセスポイントについてこのようなエントリーを上げたことがある。

問題は上記を知りつつそれを隠し、本質を見せないようにしつつ言葉狩りに走っている人々だ。
それが誰なのか、とは言わない。しかし昨今の議論の中ではこうした問題点には全く触れずただ言葉狩りを訴えているだけに見える人も多くみかける。
それがキャリアやメーカーの人間であればある程度の理解は出来る。自分たちの立場も踏まえた上での発言であれば、ある程度のポジショントークもやむを得ない面はあるだろう(それでも健全に素直な議論をお願いしたいものだが)。
しかし一部のライターと呼ばれたり自称”ジャーナリスト”な人々についてはどうだろう。
上記のような論点を知らないのだとすれば全く持って勉強不足だし、キャリアやメーカーにおもねて「言葉狩り」に走るのだとしたら論外だ。

我々消費者としては言葉狩りに惑わされる必要はない。言葉は生き物だしここまで広まった言葉を否定する必要もない。「それが失礼だ」というのなら、何が何に対して失礼なのだろうか。消費者がキャリアやメーカーに何を気を遣う必然性があるのか。消費者とは独善的なまでに消費のための要求を行うべきなのだ。
それよりもぜひ気を付けて欲しい。本質に気付かれたくない人たちは常にいつの時代でもこうした些細な問題に目を向けさせ本質論を阻もうとすることに。
小さな問題に気を取られてより大きな問題を見誤ってはいけないことに。

2010-04
28
06:55:51
日本のケータイWEBはどうしてこんな仕様になったのか


また高木さんが恐ろしい記事を上げている。
これまでも日本のケータイWEBの問題点は様々な人に数々挙げられてきたが、この記事の指摘は中でも最大のターニングポイントになるだろう。
ここまで破綻しているケータイID認証(簡単ログイン)
実はこの記事での指摘点には個人的にも言及したい点があるのだけど、ちょっと理由があるのでそれはまた後日にしたい。それは恐らくこの記事だけから受ける印象よりも実はこの問題はひどく根が深く影響は幅広いということだ。

日本のケータイWEBの有様は特徴的だ。特に技術的な立脚点によるものが大きいと思うが、それが「ガラパゴス」と呼ばれるゆえんであることはまず間違いない。特異な技術立脚点が海外や他キャリアとの互換性を蔑ろにし、独自な進化をせざるを得なかった(独自に進化したのではなく、せざるを得なかった点に注意)ということだ。

ではその「技術立脚点」とは何か。
僕は個人的には「パブリックなインターネットをインフラにしてクローズドなケータイ・ネットワークを作り上げること」を主眼にした点だと考えている。
以前モバツイで有名なえふしんさんがこんなことを言っていた。

http://twitter.com/fshin2000/status/9612891626
もろもろセキュリティのことまで考えると、携帯サイトはガラパゴス(国内で閉じてる)の方が良いんじゃないかなぁ。

個人的にも以前から感じていたことでほぼ同意である。
というか、そもそもケータイWEBネットワークはもともとここまでの興隆を予想して組み立てられていないのだと推察する。

以前挙げた日本のケータイWEB(モバイルEC)を脆弱に支えている三原則を再掲する。

(1) そのアクセスがそのキャリアの携帯網からのみであることをサービスプロバイダーが保証すること
(2) 携帯網では端末IDが偽装されていないことをキャリアが保証すること
(3) 端末の自由度を低くして端末IDの偽装などの可能性をできるだけ低く保つこと

これはつまり大前提として、ユーザーがこのケータイWEBに介入できるのはケータイ端末の「操作」までであって、自由な端末やアプリをケータイネットワークに接続することは想定していないということだ。
これは恐らくこういう事だったのではないだろうか。
そもそも一番最初にケータイWEBを企画する際にインターネットへの接続を行うことは当然MUSTだった。つまりインフラとしてはインターネットをそのまま利用すると言うことだ。またサービスプロバイダーを引きつけるためにはお金を生む仕組みを用意しなければならない。契約者固有IDのような課金通知の仕組みは必須である。
しかし当時セキュリティという観点ではPKIなどの完全なセキュリティ手法の導入には手間もかかり端末の性能も限られている。しかし何も行わなければインターネットという性質からはなりすましや情報漏洩はほぼ防げない。
そこで「簡単に」ケータイ側を「セキュアに」保つために先の三原則が考え出された。
つまり契約者固有IDを守るために「端末」「回線」「データ」をインターネット上からできるだけ切り離しその中にもう1つの「クローズド・ケータイネットワーク」とすることでこれら情報を守ろうという試みである。
IPアドレスでの制御であったり端末への独自アプリの禁止などといった稚拙な方法であり全くレベルは異なるが、「安直なVPN」とでも思えばいいのかも知れない。
当時今ほど日本は垂直統合モデルは強くなかったと記憶しているが、そのために端末仕様を強制したり一部のサービスプロバイダーを公式サイトと認めて契約者固有IDの取り扱いをキャリア支配に置くなど、必然的に垂直統合モデルが必然となった。

どうだろう。これは想像でしかない。しかし一定の説得力のある仮説にもなっていないだろうか。

しかし当然時代が変われば状況も変わる。高木氏が指摘したポイントも当時は想定されなかった技術的な変化故だし、またSIMフリー化の流れも微妙なプレッシャーを与えつつあるかも知れない。
ケータイWEBが変わったのではない。周りの環境が変わったのだ。一理ではだからこそケータイWEBはこのままでは変化は起こせないだろうとの諦めもある。一方で、まず間違いなくいつの日にか莫大な被害を及ぼしながら日本のケータイWEBビジネスが信用崩壊する危険性は日に日に高まっているとも言える。

だからこそえふしんさんの主張も説得力を持つことにもなる。
では現状ケータイWEBはどうあるべきなのか。
まず第一に契約者固有IDの送出先は各キャリアの認める公式サイトだけにすること。勝手サイト、すなわち「クローズド・ネットワーク」以外への送出は一切禁止とする。契約者固有IDのような「インターネット標準」ではないID送出を勝手サイトなど公式サイト以外に送出してはならない。
次に公式サイトはキャリアネットワーク(ゲートウェイ)とVPNなどのインターネット標準のセキュアな接続を行うことを必須とする。そしてこの場合のみ契約者固有IDを送出することにする。これは通信を秘匿する/通信先を限定するという意味もあるが契約者固有IDの送信先を各キャリアと限定的な「クローズド・ネットワーク」に閉じ込めてしまうという意味もある。これにより現行のあいまいなクローズド・ネットワークよりもより強固なクローズド・ネットワーク化により契約者固有IDは守られることになる。
第三に公式サイトはキャリアネットワークのVPN接続以外からの接続を受け付けてはならない。つまり通信は完全にクローズド・ネットワーク内に閉じ込めるようにする。
これらより詐称や偽装という問題は(データや処理を正しく取り扱える限り)ほぼ回避できるはずだ。

しかしこのままでは今より使い勝手が落ちユーザークレームももちろん増えるだろう。上記は現状の「ガラケー機」つまり契約者固有ID送出可能な従来の端末または携帯網用のアクセスポイント接続時に限ることにする。上記はすべてネットワークサイドのポリシー変更で可能なのでこれまでの端末はそのまま使用可能だ。
一方でスマートフォンに代表される、契約者固有IDに頼らない新しい認証や課金方式にWEB標準として対応可能な端末とアクセスポイントへの接続を共存させる。こちらは接続先には制限は設けなくてよい。何故なら純粋なインターネット利用端末に過ぎないからだ。そして時間をかけてこちらの方式への移行を促すことにする。

二方式を併存することは新方式への移行を促す期間のモラトリアムであると同時に、 自由競争を作り出す規範ともなるだろう。また明確なクローズド・ネットワークと位置付けることで、例えば未成年者用の端末はクローズド・ネットワーク対応のみとすることで例えば公式サイトしか接続できないような「キッズ・ケータイ」も可能になるかも知れない。

さて、これらのことは絵空事だろうか。全くの杞憂に過ぎないフィクションですむ話だろうか。
その答えは高木氏の指摘の行間に実は潜んでいると思っているが、その話はまた後日・・・(にできるといいなぁ。。)

2010-04
01
22:55:41
SIMロック解除よりもアクセスポイントの解放こそが有効だ


Xperia発売やauの新スマート”ブック”(笑)発表の影響もあるのか、最近SIMロック論争がTwitterなどを中心に活発に行われている。
また明日総務省がSIMロックに関してキャリアやメーカー、消費者団体を招いてヒアリングを行うとのことなので、この話題はまだもう少し続くことになるだろう。

SIMロック解除だけでは不十分

これら一連の議論で「SIMロック解除がガラパゴス状態を改善する」との簡単な論理には幾分不安を感じる。消費者からすれば重要なことは「キャリアのガラパゴス政策が緩和されて、現在国境やキャリア観で分断されているサービスや機能が水平分業的に解放される」ことだと思っているのだが、先のSoftbank松本氏昨日行われたau説明会でのキャリア側の言い分からは、仮にSIMロックが解除されても(ロック完全禁止であろうと一部禁止であろうとも)キャリアの対応によって骨抜きにされてしまう可能性が高い。
キャリア側の言い分は、仮にSIMロックを解除してもそもそもiモードなどのサービスがキャリアごとに違うのでほとんど意味がない、というものだ。そしてこれは実はほぼ正しい。
先日書いたように端末ID(サブスクライバID、個体識別番号)の仕様もキャリア毎に異なるので恐らくサービスプロバイダーの対応も複雑になるだけであまりメリットが無く、そもそもSMSのキャリア間送受信もまだ行われておらずdocomoのようにそもそもMMSも持っていずiモードのように他社ではとても対応できないようなサービスを提供していたり、WAP(ブラウジング)のような国際標準に対応しない端末が大量に出回っていたり、SIMを抜いてしまうと端末自体が全く動作しなくなったり、はたまた例えば購入したコンテンツがSIMに紐付いているのにフォーマットが異なるので他社や他機器では再生できない、などなど。要するに「よもやSIMロックが解除される事態が来るとは思ってもいなかった」事態が多発することだろう。
もちろんこれは、「そうであればサービスを共通して使えるようにしろよ」という話でもあり、この10年囲い込みにしか情熱を燃やしてこなかったキャリア各社の怠慢であり責任としか言えないのだが、これを逆手にとって仮にSIMロックが解除されても「ほらサービスが使えなくなっただけでしょ。SIMロック解除なんて有害なだけだったでしょ」という開き直りとも言える施策を取る公算が大変高い。
つまりSIMロック解除という点だけに注力するとまんまとサービスの非互換性を逆手にとってSIMロック解除を骨抜きにしてくるだろうな、というのが僕の読みである。

であるならではサービスも共通化して解放せよ、というのがまっとうな意見ではあるのだが市場にこれだけ溢れているガラケーを考えると、単にそう主張するだけなのも実効的ではない。
そこで僕の意見は、SIMロック解除だけを主体にするのではなく(但し今後の端末を考えればこれも重要だ)、各キャリアのアクセスポイント(AP)解放要求を主体に置くべきではないかと考える。
恐らくこの「アクセスポイント」とは何のことか気付いている人は少ないと思うので少し説明しよう。

アクセスポイントは何故日本では故意に隠されているか

一言で言えばWiFiで言うところのSSDのようなものだと思えばいい。つまり端末が通信を行う上でアクセスするダイヤルアップ先のだ。
普段、特に日本ではほぼこれの存在に気付くことはまず無い。何故ならこれは日本特有の現象なのだが、日本ではキャリアがどんなアクセスポイントを用意して端末に利用させているか隠しているからだ。

例えば海外製のスマートフォン(以下ではWindows Mobileの例)では以下のように通話やブラウザ(WAP)またはMMS(メール)向け接続のためにどのアクセスポイントに接続するか設定する画面が用意されている。
(因みにSIMフリーのiPhoneなら同様の設定がある)

アクセスポイントであるので、通常そのアクセスポイント名とユーザー名/パスワードを設定することで利用が可能になる。
海外ではスマートフォンに限らず通常の携帯でもこうした設定は存在している。しかし日本の携帯ではそうした設定を見たことのある人はほとんどいないだろう。なので恐らくケータイ関係のライターでも知らない人は意外に多いと思う。何故か?それは携帯側で「決め打ちで」自動的に設定してしまっているからだ(あるいはSIMにその情報が書かれていて自動設定する場合もあるようだ)。
では何故日本のキャリアはアクセスポイントを隠すのか。実は明確な理由はキャリアからは公表されないので正式には分からない。しかしSIMロックと同じように、「自社の端末と回線の組み合わせだけを間違いなく利用者に使用させたいから」という意図であろうことは容易に想像できる。つまりガラパゴスと揶揄されるのと同じようなキャリアによる囲い込み施策の一環である。

アクセスポイントは世界的には公開されてしかるべき

以下のURLの資料を見て欲しい。これは各国におけるアクセスポイントの一覧だ。

Carrier APN Settings


APN Settings for iPhone 3G

海外キャリアではほぼ例外なくこれら自社アクセスポイントの情報を公開している。これはSIMロックを行っている国でも同様だ。つまりSIMロックでの議論で言われるように「世界的にはSIMロックを採用している国の方が多い」という話とは明確に異なる状況だ。日本のまさしく特異な「ガラパゴス状態」を端的に表している例だと言えるだろう。

またユーザー名/パスワードも同時に公開されており秘匿はされていない。資料を見ても分かるように、パスワードと言っても複雑な文字列を設定している例はほとんど無く実態的にはパスワードをかけていることに意味は無い。まさしく「公開」されているのである。

1つのキャリアでも複数のアクセスポイントを使い分けている場合もある。良くあるのはWAP(ブラウザ)とMMS(メール)が異なる場合や、プリペイドかポストペイドかや定額制と従量制の場合など契約形態毎にアクセスポイントを指定している場合などだ。
つまりキャリアからすると使用されたアクセスポイントによってユーザーの利用形態や課金単位を変えたり判別するのに使用していると思っていい。

一方日本ではどうかというと、公開されていないものの、一部アクセスポイントの存在が判明しており一部ユーザーにより情報が公開されてしまっている。
実は判明しているのは従前から海外とほぼ同じ仕様を使用しているSoftbank(旧Vodafone)だけなのだが、それによれば通常の携帯網用AP以外にXシリーズと呼ばれるスマートフォンの定額用AP(通称open)やiPhoneはまた別のAPを使用しているようだ。また従量制のAPについては設定がそもそも必要になるのでこれは公開されている。
docomoとauはガードが高いらしく、これまで携帯網用のAPは明らかになっていない。しかしスマートフォン用APは別に用意されているらしく、また例えばdocomoでは一部moperaと呼ばれる接続サービスでPCデータ通信用AP(スマートフォン用ではないことに注意)は公開している。

アクセスポイントをフリーアクセスにすることで新たなエコシステムの確立を

ではアクセスポイントが公開されることで何が変わり得るのか。
前提はアクセスポイント情報が公開された上で「契約ユーザーが自由に自身の携帯やスマートフォンを設定して利用するのを認める」という点だ。ここで各キャリアの端末に縛られず自由に他社端末であろうと接続できることがポイントになる。
これでも先に述べたように各社サービスの非互換性は担保されない。レイヤーが異なるからだ。しかし端末の自由化がSIMロック解除以上に進むため、よりバラエティに富む端末やサービスの流入を呼び込む可能性が非常に高い。 但しこれは従来の携帯網向けアクセスポイントを解放すべきという話ではない。恐らくそれでは個体識別番号の脆弱性が顕在化し、従来のビジネスへの影響が非常に高い。海外では個体識別番号というものは存在しないので携帯網も公開されているのだが(というかそもそも携帯網とスマートフォン系という違いが存在しない)、残念ながらこうした過去の負債があるので日本では行えないだろう。
しかし各社は既に主にスマートフォン向けのAPを構築しつつある。Softbankはopenと呼ばれるAPやiPhone用APを既に持っているし、docomoもmoperaというプロバイダー事業でスマートフォンAPを用意している。auはこれまで無かったはずだが先日のISシリーズの発表でIS-NETというプロバイダーを発表している。これは恐らくスマートフォン向けのAPを用意することになるはずだ。
そこでこれらスマートフォン用と同様のフリーアクセス(課金が、という意味ではない)アクセスポイントを別に準備してもらうこととする。
但し例えばdocomoなどは従量制のAPを差して「既に利用できる」と言い張るかも知れない。しかしこのAPは従量制であるので利用料金は青天井だ。そこで他にスマートフォンなどで定額制を導入しているのならば同様の金額による定額制の導入は義務化することとする。

こうすることで従来の携帯網(すなわち「ガラケー」)を中心にした垂直統合型ビジネスモデルと、新たなフリーアクセス・アクセスポイントおよびSIMフリー端末による新たなオープンモバイル網が共存し、新たな競争原理が導入されることになる。前者の担い手は従来通りキャリアであり、後者の場合キャリアは通信部分に専念することになり担い手は端末メーカーかも知れず課金や認証含めたサービスプロバイダーまたは海外勢含めた業界全体という立ち位置になる。

残念ながら既存の「ガラケー・ビジネスモデル」はすぐに無くなるものでもなければ、また一気に無くしてしまうのは既に多くのユーザーを抱えている以上不要な混乱を起こすわけにもいかないだろう。また現状これ以上キャリアとしての競争相手が増えることも予想できず、カルテルとも言えるほど各社料金などが横並びの状態では大きな変化をキャリア自ら生み出すことは難しい。
しかし新たな競争軸を生み出すことは可能なのだ。そして自由度(端末やコンテンツ、価格の自由さと競争原理、参入の容易さ)が担保されれば必ずマーケットは動く。そして競争に晒されれば「ガラケー・ビジネスモデル」側も必然的に変化に迫られるはずだ。
まずはぜひこうした「アクセスポイント」という故意に隠された論点があることを知って欲しい。そしてそれは日本でのみ特異な扱い方をされている。
繰り返すが何故隠すかと言えば隠すことでそこから何らかのメリットを享受する人々が存在しているからだ。そうした視点を消費者としては手に入れるべきだ。