Squareと呼ばれるiPhoneを始めとした携帯端末でクレジットカード決済を行う拡張端末が話題になっている。
iPhoneを端末にクレジットカード課金ができる―Twitterの開発者、Jack DorseyのSquare、ベータ開始
当然にして日本ではおサイフケータイとの比較で話も進むのだけど、そもそも少なくとも技術的には全く別のレイヤーなのであまり比較しても意味がない気がする。とは言え、実際に日本でサービスを始めたら確かにマーケット的にはかなりの部分でおサイフケータイと被る部分が確かに出てくるだろう。
分かるだろうか。どこの店で買ったか、どこのなのかの地図、が一目瞭然である。
これでSquareの1つの狙い所が分かる気がしないだろうか。
つまりSquareは購買のすべてを「こちら」から「あちら」へ持って行きたいのだろう。
「あちら」と言うのも久しぶりに使う気がするのだけれど、要するにクラウドだ。端末というのは入り口に過ぎなくて、実は購買のすべてをクラウドにおきたいというのが実際の狙いではないだろうか。
そう考えるとおサイフケータイとの狙いの違いもよく見えてくる。
おサイフケータイと一言で言ってもいわゆるクローズドな電子マネーからクレジットカード搭載まで幅広いのだけど、簡単に言えば独自電子マネー型とクレカ設定型に分かれるだろう。
独自電子マネー型にはEdyやSuica、クレカ型にはiD、QuickPayが含まれる。ここで独自電子マネー型は従来の商活動を模倣したものと言える。つまりまさしく貨幣をローカルのケータイに入れて使う際には取り出して商品やサービスと交換しているのだ。
わかりやすいが欠点も多い。その1つがクラウドとの相性が悪い点だろう。もちろんこれにはプライバシーを守るという理由が大きいのだけれど、例えば端末間で電子マネーが移せない、利用履歴はローカルに残るだけなので証左が無い、使ってから(電子マネーなのに)クレームが入れられない、などの点がある。
これらはすべて逆にクラウド型ならメリットになる。つまり様々な機器で自分のアカウントから決済したり、使用履歴を整理したりそのデータを使って別のサービスに連携したり、(日本では無理だろうけど)納税サービスと連携したり、などである。
日本人があまりクレカを好まないのは現金主義つまり手元の資金で支払いなどを行いたい人が多いそうで、電子マネーがまだそれほど普及しきっていないのもそういう理由なのかも知れない。
しかし一点言えるのは、本当に便利でその便利さを知ってしまえばこうした特性とかは簡単にひっくり返るということだ。
一方、クラウドに相性がいいのはこうしたクレカ型なのだろう。しかしクレカの機能以外でこうしたサービスをこれまで聞いたことはない。本来クレジットカード会社がこういうことはしたいのだろうが、色々事情もあるのだろう。逆にサードパーティでなければこういう穴は開けられないのかも知れない。
翻ってもし日本にSquareが登場したらおサイフケータイには驚異になるだろうか。
恐らくこうしたクラウドの特性を最大限生かされれば、少なくとも独自電子マネーはかなりの驚異だろう。それどころか、今この世の春を謳歌している携帯決済でさえ、僕は危なくなる可能性があると思う。
クラウドはすべてを飲み込みあらゆる場所・機器・環境からのアクセスを可能にする。全キャリアを横断する手頃な決済がもし現れたらひとたまりも無いんじゃないだろうか。
電子マネーにせよ携帯決済にせよ、10年前なら新しかったかも知れないが現在ではすでに古い技術になっているのかも知れない。10年もすれば次の技術基盤に置き換えられていくのは当然とも言える。
iPhoneがむりやりこじ開けた日本の閉鎖的な壁からは、今やAndroidやWMなどスマートフォンが着々と流れ込んできている。一旦広がったプラットフォームにこうしたソリューションは簡単に乗ってしまうことだろう。
今はまだ日本の携帯業界は枕を高くして寝ているかも知れない。しかし「買いたいケータイがない」というユーザーの声は日増しに高まっているようにも思う。
果たして何十年か昔同じように我が世の春を謳歌していた日立や富士通などの汎用機メーカー、はたまたPC-98で80%以上のシェアを握っていたNECが何が起こったか思い出してみるべきだし、歴史は確実にそれが起こることを示唆している。
ワールド・スタンダードには絶対に勝てないのだ。
1 thoughts on “Squareはおサイフケータイと闘うことになるのだろうか”