2009-01
10
03:23:00
BBA主催「オープンプラットフォームの進展で期待したいモバイル・ブロードバンドビジネスの将来展望」パネルディスカッションを聴いてきた


あまりこういう会には行かないんですが、ブロードバンド推進協議会が主催する「オープンプラットフォームの進展で期待したいモバイル・ブロードバンドビジネスの将来展望」(長い!)というパネルディスカッションを見てきました。
参加してみたくなったのはメンバーがなかなか面白そうだったから。

オープンプラットフォームの進展で期待したいモバイル・ブロードバンドビジネスの将来展望
■日時
2009年1月9日(金) 16:30開始
■会場
笹川記念会館
■主催
有限責任中間法人ブロードバンド推進協議会
■パネリスト

谷脇康彦(総務省情報通信国際戦略局 情報通信政策課長)

松本徹三(ソフトバンクモバイル株式会社 取締役副社長)

夏野剛(慶応義塾大学 特別招聘教授)

山根康宏(携帯電話研究家/ジャーナリスト)

ね、面白そうでしょう?
夏野氏はdocomoは退職済みですが、あの「iモードの生みの親」です。本人は「前職のことなので」とは言ってましたが発言自体はキャリアの立ち位置そのままでした。
山根さんは言わずと知れたあの山根さんです。初めて生山根さんを見て、ちょっとだけミーハー視線を浴びせてしまったのは内緒です。
このように官僚代表とキャリア代表と携帯研究家(笑)が一堂に会するパネルディスカッションもそうそうは無いでしょう。
パネリストはかなり豪華でしたが思いもよらずまさかあのようにぐだぐだな経過を辿り、そしてあんなまさかのどんでん返しがあろうとは。
時系列で簡単ですが内容を紹介してみます。

総務省によるオープンプラットフォームの推進

最初に30分程度、総務省 谷脇氏による基調講演がありました。
総務省主導で推進を検討しているモバイルへのオープンプラットフォームの導入ポイントが語られました。
これがなかなか興味深いです。

  • ブロードバンドユーザーは3000万人を超えた。携帯契約数は1億の大台突破
  • 成長は終わり、成熟へ。ARPUは下がり続けており、データサービスを如何に拡充するかが重要
  • オープンプラットフォーム導入によるオープンなモバイルビジネス環境を作り上げる必要がある
  • プラットフォームとはつまり垂直統合モデルのみではなく水平分散型モデルも導入すべき。端末やネットワーク、通信サービス、プラットフォーム、コンテンツ・アプリケーションの各レイヤーに通信事業者以外の参入が容易になるように促したい
  • 例えば公式ポータルの解放、認証・課金システムへの参入、MVNOと多彩な端末の投入が可能となるように
  • 今のキャリアを排除するのではなく、各種プラットフォームが柔軟に連携できる仕組みを導入して、容易な参入を促したい
  • MNPに止まらず、メールアドレスや購入コンテンツがキャリア間で自由に移動・利用可能なように

僕は本当に勉強不足で、まさか総務省がここまで踏み込んだ検討を進めているとは思っていませんでした。
後でも出てくるんですがここまでの踏み込みがあるからこそ先だって行われた端末価格と通信価格の分離という政策も打ち出せた訳で。
僕はこれまで単純に「日本の携帯を世界に対応できるようにもっとオープンなものに」というモバイラー周辺で見かける論調は単に一部のマニアユーザーによる一種の消費者運動のように思い込んでいたのですが、それは間違いでした。
あくまで消費者保護や新規参入者への公平性確保の観点から既に政策として検討の始まっていることなのです。
詳しい資料は総務省が調査研究会報告としても公開していますのでぜひ見てみて下さい。
また案に対するパブリックコメントも、特に各キャリアからのものは面白く読めると思います。

パネルディスカッションが楽しみだったのだけど・・

続いてパネルディスカッションへ移りました。
最初に司会者から、本当は端末メーカーさんも呼びたかったんですが断られました、との話がありました。思うにキャリアと官庁の板挟みの場には来たくなかったんでしょうねぇ。
僕は本当にこのパネルディスカッションを楽しみにしていたんですが、結論から言うと一部を除いて大失敗でした。
何故って司会が本当にぐだくだだったんです。
ディスカッションなのにテーマを決めておらず、司会から一方的に質問を投げて、それも順にではなく挙手などでもなく、司会者が一方的に指名するだけ。
しかもその質問にその人が相応しいか?という局面も度々でした。
夏野氏が度々暴走して司会者にも食ってかかってたんですが、それを止められずおろおろするばかりで見てられませんでした。
しかも「あの」山根さんを、端末メーカーが来てくれなかったからと言って、端末メーカー代表として指名する始末。「端末いっぱい持ってるから端末メーカーのことも詳しいだろ?」的な安易な発想です。山根さんがどういう人か知ってたらこんな進行はあり得ない。
業界でも指折りの海外端末に精通したマニア「ユーザー」だよ・・・?
「じゃあ消費者代表はどこにいるんだ?」とは僕の心の声です。
山根さんも真面目な人らしく言われるがまま端末メーカー視点を少なくとも最初は演じてしまい、夏野さんから突っ込まれてしまったのがもの悲しかった。
キャリア相手にもっと言いたいことあっただろうに・・。
さて内容ですが、終始こんな感じで話が飛びまくっていたので話の流れめいたものはありませんでした。散発的に幾つかの話題が出てきた程度。
全く議論が発生していなかったのは返す返す残念無念。
司会者の戦犯度100%です。
幾つか覚えているところや興味深かったところを羅列してみます。

司会: 携帯不況とセットで語られるが、先の端末価格自由化(分離)の意味は何か

夏野氏と松本氏はともに「これは官製不況ではない」と。何故なら「以前からの売り方も残っているから」ただこれはとなりの総務省役人へのリップサービスもしくは嫌みがちらほら。そんな大人の嫌な香りがぷんぷん。
夏野氏は更に「価格自由化で負担が増えたのはメーカー。何故なら販売奨励金によってキャリアが販売の面倒をみていたのが無くなったから」
これに対し海外状況を聞かれた山根氏は、「海外ではもちろん販売奨励金などは無くまた純粋に電話としての使い方がメイン。よって海外ではコンテンツをどう売っていくかが現在模索中(なのでサービスがメインの日本とは状況が違う)。携帯不況というならそれはこれまでのキャリアの限界では」と回答していました。
谷脇氏は、販売奨励金自体はどこの業界でも行っている商習慣であり行政が立ち入ることではないとしつつ、これまでの販売奨励金の会計処理の不透明さを指摘していました。つまりその原資が通信原価として取り扱われているのがおかしかったというのが真の意味だったようです。今後は会計上分離を指導していくとか。

司会: iPhoneやAndroidなどの海外携帯/OSは今後日本市場の驚異になるか

山根氏:「AndroidがHTC/イーモバイルなどを経由して乗り込んでくることは十分あるだろう」
夏野氏:「いや、広まることは無い。例えばNOKIAのブラウザは(iモードなどの日本製より)ひどく使いにくい。日本製の使いやすい端末に慣れたユーザーに受け入れられるはずはない」「Googleが何故OSを出したと思うか?それはNOKIAなどひどい操作の端末しか無くてGoogleが作らざるを得なかったから(注: このへん少し意訳入っています)iPhoneも同じこと」「日本人は今世界でも一番のサービスを利用している。OSが出来たからと言って参入できる訳がない(注:このへんも意訳入ってます)」

司会: MVNOは普及するか

夏野:「無理。差別化が難しい。新しい独自サービスを導入できなれば失敗するだろう。新規でサービスを立ち上げるのは本当に難しい」「NOKIAのMVNOもうまくいかないだろう」

司会:(谷脇氏が講演した)課金の自由化などについて

夏野:「(総務省の研究会?でまとめた案=谷脇氏の講演内容を指して)こんなの僕は全く同意していないんだけど」と前置きした上で「何故今うまく動いている仕組みを変えないといけないのか。ユーザーはこれだけ多く増えても便利に安全に使ってくれている。」
ここで山根氏海外での状況を問われて「海外ではそんな仕組みはそもそも無いので、PCと同じくみんなクレジットカードを使用している」
夏野氏がこれに反論して、「以前2003年?頃に携帯スパムが異常に増えたことがあった。調べてみるとある悪意ある決済会社と販売会社が結託してユーザー情報を流していた。」「課金がオープンになるとそんなリスクがつきまとう」
松本氏もこれに同意し「キャリアの日常は日々悪者との戦いだ。本当に悪者が多い。我々がユーザーを守っている」「1Stopサービスが悪いようにおっしゃるが、1Stopサービスはユーザーにとって便利ですよ」「課金サービスをやりたいというならやればいい。本当に大変なんだから」
山根氏が更に反論「キャリアがサービスを決めるのではなく、ユーザーに選択させるべき」

(会場からの質問で)日本のサービスは海外へ進出できるか

夏野氏:「サムソンやLGが海外でも受け入れられているのは、メーカーであっても英語などに堪能だから。海外事業は本当に大変。その点彼らが優秀だった。」「日本のメーカーの社員の多くは英語が駄目から進出できていない」
山根氏:「日本を世界一と思っているから失敗する。現地に密着してサービスを作らないと無理」「例えばNOKIAが何故世界市場であれだけ受け入れられているかと言えばマニュアル読まなくても操作可能だから。海外の人はマニュアル読む習慣がないので日本の携帯そのままでは受け入れられないはず。そうした現地への考慮が必要」

最後は総務省が持ってった!

基本的には声の大きなキャリア代表二人がキャリアとして言いたいことを主張し続けてディスカッション?が進んだという印象です。
恐らく谷脇氏が講演したような自分たちのテリトリーを荒らされる政策は気に入らない訳で、「日本のサービスは世界一」「何故こんなにもしっかりとした便利で安全なサービスに手を入れようとするのか」「海外サービスは使いにくいだけ」ということを甲高に主張されていました。
特に夏野氏は恐らく場数を多く踏んでいる印象で、こうした局面には慣れており答え方が分かっているのでしょう。返し方や問題のすり替え方、とぼけ方が絶妙でした(因みに、褒めています)。
司会者が更に駄目な点は、ではそうした主張に対してどう思うかなどを他のパネリストに全く振らないことです。
特に谷脇氏にはパネルディスカッションに移ってからは何故か全く話を振らず、山根氏に反論もさせなかったのでただキャリア二人が言いたいことを言って終わりに近づいたという感じですね。
こうしてまとめるとまとまった感じの流れにも思えますが、実際にはディスカッションになる前に司会にぶった切られて他の質問にされてしまい、「これから流行るサービスはなんでしょう」とかタイトルとは無縁な質問も続いたりして少し辟易しました。
参加者からの質問でも(あまり時間がなかったので少なかったのですが)「今回の新製品が浸透するのにどれぐらい時間がかかるでしょう」とか空気も自分が何というタイトルの会に出ているのかも読めない質問があったりして、実は終了の1分前まで「このパネルディスカッションは大失敗だよなぁ」と思っていました。
最後に、恐らくこんな空気読まない司会者ですので全く意図していなかったはずなんですが、会の締めを谷脇氏に(ここでようやく)振りました。
谷脇氏マイクを取って「ここで何も言わずに終わると主張を受け入れたことになりますから」と前置きし、「さもオープン化が弊害を生むようにおっしゃったがオープン化は悪では決してない。もしオープン化が悪いことなのなら、最初からオープンな固定ネットワーク(インターネットですね)はどうなるのか。」「総務省にはキャリアには言えないコンテンツ・プロバイダー各社からの声も十分に届いている。キャリアに睨まれないように、総務省が彼らの声を拾い上げる必要がある」「健全なビジネス環境の構築のために全体最適化が欠かせないというのが基本的な立場です」と一気にまくし立てました。
他の参加者はどうだったか知りませんが、僕は唖然。後に(心の中で)喝采。
か、カッコいいな、谷脇さん!最後綺麗に持って行ったよ!
キャリア二人は何も言わずただ俯いていたようです。
「消費者代表はどこ?」と思っていましたが、それは官僚代表でした。

携帯業界で現在起こっていることをリアルで見れた良いパネルディスカッションでした

正直進行はめちゃくちゃでしたが、最後の谷脇さんの勇姿を見せてもらっただけでも出席した甲斐がありました。
キャリアは本当の本気でああいうことを主張してるんだなぁとか、総務省の明確な態度を垣間見れたのは収穫でした。
官僚だからなどと色眼鏡で見てはいけませんね。谷脇さんの力強い発言からは真摯さがひしひしと伝わってきました。ファンになりそうです(笑)
そんな訳で今日から僕は「総務省派」を公言することにします(割と本気)
本当はキャリア側と谷脇さんの突っ込んだ議論を見たかったですが、それは次の機会に取っておくことにしましょう。
以上、お粗末様でした。

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