一昨日の記事では書き足りない気がしたので追記してみる。
そもそも今回のGoogleのペイパーポスト問題への様々な言及を見るに、せっかくなので乗っかってもうすこし明確なことを残しておきたい。
こんな辺境のブログだけど、少しでも声を上げておこうと思う。
一昨日の記事で書けなかったのは、そもそものペイパーポストに対する是非だ。
以下、目に付いたあたりのブログ記事。
Google、ペイパーポストのブログマーケティングで謝罪
GoogleのPayPerPost騒動の議論に思うこと
Google Japan、マーケティングと倫理観の憂鬱
これ以外にもかなりのブログやSBMで言及されている。
けれど僕の感覚からすると、それはちょっと違うんでないの、という意見も少なからずある。
無論それはそれで意見だし感想なのだけど、そういう層に向けてもう一度どうして問題視する人は問題視するのかまとめてみる。
1. ペイパーポストは「悪」なのか
僕はそもそもこれが「悪」だと思っている。もしくは「悪」と見なすべきだという立場だ。
では何故「悪」と見なさないといけないか。それは自由な意見の積み重ねで成り立つべきネットに対する明確な悪意だからだ。
それは(US)Google自身も認めている点である。
しかしそれは検索屋としての立場からの意見だという反論もあろう。もちろんGoogleの言うことが全てではないし当然そうしたメリット「も」見込んでのことだろう。
だがこれを一般雑誌や新聞に置き換えて考えてみて欲しい。例えば雑誌の論壇記事や報道記事が実は明示されずに広告だったらどう思うだろうか。いい例は先のマクドナルドのサクラ行列の報道記事だろう。あれが実はマクドナルド側のやらせだったと知れて、何故ネット界隈は怒ったのか。
虚実をあいまいなまま織り交ぜて全て真実のように扱われ、視聴者側が何が真実か判断できないからだ。
一歩進んで、とある政党への好意的な記事が実は広告だったとなったらどうだろう。
翻ってネットにおいては、こうした「偽情報」によってネット世論を誘導したいというネットのコントロールを狙った手法こそがペイパーポストだと思う。
これはとても嫌らしくさましい欲望だ。
少なくともネットとは誰かに集中管理できるものでもないしさせるべきものでもない。各個人個人が平等に参加し一定のメリットとデメリットを等しく享受する場である。これは今後100年経っても変わらぬ真実であって欲しいと思う。
そこに対して嫌らしくさましい欲で思うがままに操りたいという気持ちの表れの一つがペイパーポストという形なのだと思う。
ペイパーポストがネット界隈に受け入れられるためには、あるいはコストパフォーマンスが低いからよくないのだ的な意見も見受けられたが、それは意識が低すぎると言っておこう。
問題はペイパーポストのビジネス的可能性やGoogleという大企業が行ったからではない。
一般ユーザーを蔑ろにした裏切り行為だから問題なのだ。そうした本質的な議論と指摘が行われるべきだ。
「考え過ぎなのでは?」という意見も聞こえてきそうだ。
けれど一つを認めれば全てを認めてしまうのも同じことになる。だから今起きている問題には厳しく声を上げるべきだと思う。
実は欧米では既にこうしたステルス・マーケティングは規制の対象となっている。
Web2.0型消費者主導の口コミ広告に規制の動きが始まる米国
ステルスマーケティング手法を禁止する新しい英国の消費者保護法(前編)
つまりGoogle Japanの行為は欧米であれば違法だったということだ。
あるいは現時点の日本でも悪質な場合には公正取引法違反の可能性もあるんじゃないだろうか(自信なし)。
欧米を見るまでもなく、こうした問題は必ず行政の介入に繋がる。
無論そうした規制の強化はネット界隈にとって決してよいことではない。
これこそが我々自身でペイパーポストを排除しなければいけない、一つで十分な理由である。
2. Google自身のポリシーに違反していたからいけないのではない
議論の一つとして「Google自身が決めたポリシーにGoogle Japanが違反したのが問題だ」というものがあった。
しかしここだけに止まると、単なる自身のルール違反の話にしかなっていない。
先に述べたように「Google自身のポリシー違反」だったことが今回Google内部で問題になっただけではないはずだ(もちろんそれ自身は当然問われるとしても)。
何故Googleはそうしたポリシーを自身に課しているか。そこにはずっと以前からネット界隈でのペイパーポストのブログへの反発や議論、また先の例のようなステルス・マーケティング規制があるからである。
ルール自体が重要だったのではなく、そのルールのベースとなる考え方こそが重要だったはずだ。
3. Google Japanは素早く問題に対処できたのか
明確に否定したい。「素早い対応だった」とする向きもあるようだが。
そもそもGoogle Japanからのあのアナウンスから、どんなことが行われてしまい、何が問題で、何を改善しようとしているのか、ペイパーポストなどの背景を知らず分かった人は果たしているだろうか。
僕だったら何が何だか分からずじまいだったろう。
あの文章は如何にも、知らない人や気付いていない人には何も感づかせることなく、とりあえず体裁を整えるためアップしたというべき文書だ。大人の立場の嫌らしさがぷんぷんする文書である(そう言う意味ではGoogleの文書としては非常に特殊であるとも思う)。
こちらのブログに興味深い事実が示してある。
Google がブロガーにお金を払って広告記事を書かかせていたが実はそれは Google のポリシーに反する
要するにMatt Cuttsという本社のお偉いさんに怒られたからの対処であって、別にネットの騒ぎを聞きつけて対処したということではないのでは、という推測が成り立つ。
もしも本当に本社に怒られたからなら、そりゃ対処も素早くなろうというもの。
4. 「日本ではペイパーポストに対して甘い」のか
そんなことはないと思っている。
例えば、ペイパーポストという言葉はここ最近よく聞き出した言葉で、以前は「ステルス・マーケティング」という言葉で語られていた(PayPerPostってのはそもそも米国企業の名前のようだ。多分こうした手法の代表的企業なので、手法自体のことをPayPerPostと呼び出したのが、そのまま翻訳されて日本でも使われているのだろう)。
上記の検索結果を見れば決してそんなことはなく、以前から問題にはされていたことが分かる。声を上げる人は上げていたのだ。
個人的には今回のような大きなきっかけがこれまでなかっただけだと思っている。
但しネチケットほどは一般的ではないかも知れず、一部企業の担当者などネットの反応に疎い層では広告会社に乗せられやすい、ということはあるのかも知れない。
今私たちで出来ること
もしあなたがブロガーなら、たかが50円100円のために「やらせ記事」を書くのは止めて下さい。
あなたのそのやらせ記事はあなたの大事な読者への裏切りであり、また一つ一つの行為は僅かなものでも積み重なれば大きな影響があります。そのことをまず認識して下さい。
そしてその結果はネットのコンテンツ規制や実名の強制などよいとはいえない結果で必ず近い将来あなたに降りかかってきます。
今からであればそれを防げるかも知れません。
もしあなたが企業の広告・マーケティング担当者なら、まずこうしたペイパーポストやステルス・マーケティングの手法は、どんなに綺麗な言葉で飾られていたとしても、サクラなどと同じやらせなのだということに気付いて下さい。それは御社の大事な消費者への裏切り行為です。
今現在はその行為がバレたり非難されることが幸い無かったとしても、必ず近い将来こうした行為が激しく糾弾される時代が来ると思って下さい。
その時降りかかる苦難や苦労を避けたいなら、こうした手法を提案する業者とは今のうちに縁を切っておくべきです。
ROSAさん
ブログのほうにコメントを頂き、ありがとうございました。レスをブログのほうにさせて頂きましたので、よろしくお願いいたします。