ここ数ヶ月YouTube絡みで著作権界隈が姦しい。
そもそもここまでYouTubeが言葉の壁を越えて、特に日本人にここまで広く受け入れられるようになるとは、去年の今頃は誰も想像していなかったはずだ。
元々はインターネットというプラットフォームでは原罪のようにつきまとうはずの問題だと思うのだけど、非常に現実的に具体的にYouTubeが突きつけてきた感があって、結果的にとても面白い問題提起になっているように思う。
ここしばらくでYouTubeで話題になって、かつテレビ局などからの削除依頼で削除されたコンテンツは非常に特徴的だ。
例えば、スプーの絵描き歌、または極楽とんぼ加藤のワイドショーでの懺悔や亀田父のやはりワイドショーでの論争など、どれも「その時見てみたかった」「知っていれば見たのに」という声が聞こえてきそうな内容ばかりに思う。
これらと、例えば映画や番組をP2Pなどで丸々アップロードする行為では何やら本質的に大きく違うのではないか?と感じている。
後者はまさしく堂々たる著作権の侵害行為で誰も何も文句はあるまい。
しかし前者の場合は、多少事情も異なるだろう。
まずこれらの動画は僕たちが「その時間にテレビの前にいたならば」何ら問題なく見れた番組のはずだ。または「全時間全チャンネルを録画できていたならば」何度も気が済むまで繰り返し視聴できたはずの番組でもある(個人的な録画行為自体は法的には何の問題も無い)。
ところがもちろんそんなタイミングでたまたま視聴できる人ばかりではないし、全時間全チャンネルを録画し続ける人もまたいない。
けれどだからと言って著作権を盾にそのチャンスを取り上げられ、しかも二度と見ることもできない(ワイドショーの再放送など聞いたこともない)というのは一体どういうことだろうか。
我々は実は明確な権利を有しているのではないだろうか?
そこで「タイムシフト権」という考え方である。
テレビ番組などのように一般視聴者へ配信されるのが望まれたコンテンツならば、それをどのような時間やシチュエーションで視聴するかは視聴者自身の権利によって規定されるべきである、という考え方はどうだろうか。
まず第一に、何度か指摘されているようだけど、そもそも著作権問題は著作者における問題(それを問題とするかどうかという問題)であって、ある意味第三者である視聴者がそれをどうこう言っても始まらない。完全に蚊帳の外の議論にしかならないからだ。それがそれまで幾度と無く議論に上がってはまとまり無く流れていってしまった原因のように思う。
しかし、そこを「受益者」としての権利の問題と考えたらどうだろうか。コンテンツを介して視聴者も権利者としての議論に出来れば、「新しい時代に即した著作権の整備が必要」でいつも止まってしまう議論もより具体的に深められないか。
第二に、今日著作権はまさしく権利の化け物であると思う。
著作権の前に対抗しうる権利など無いに等しく(唯一引用が対抗しうるぐらいか。そいう論もありましたね)、著作権が持ち出されればそれ以上の議論は存在せず「著作者のおっしゃる通り」としないと世間からは後ろ指を指される感も非常にある。
権利対権利という構図はこうした閉塞感に風穴を開けられるかも知れない。
細かい突っ込みどころも幾つか気付いているのだけど、今日のところはこれで提案してみたい。
「タイムシフト権」、いかがなものだろうか。
「ネット界隈」カテゴリーアーカイブ
2006-08
29
00:29:00
オーマイニュースはプラットフォームを間違ったんじゃないか?
“「匿名の掲示板で好きなことを書くだけが日本のネット文化ではないことを見せたい」”
“2chはどちらかというと、ネガティブ情報の方が多い。人間の負の部分のはけ口だから、ゴミ貯めとしてあっても仕方ない。オーマイニュースはゴミ貯めでは困る。”
“編集部員が一記者として意見を表明することはあるが、編集部が意見を表明したり、特定の意見を排除したりすることはない。”
“全く知らないわけではない。1999年から4年間、「ほぼ日刊イトイ新聞」で毎日記事を書き続けていた。その頃から、ある程度はインターネットに関する知識はある。ただ、最近の日本における複雑なIT事情については、詳しくないというのが正直なところ。そこは、勉強していく。”
(鳥越俊太郎編集長)
ということなのなら、オーマイニュースはmixiのコミュあたりから始めればよかったのではないか。
何と言ってもタダで使えるし周りは実名(多分)だらけだし。右から左からのマイミク(記者)も一杯来るだろうに。
唯一、編集部という便利な隠れ家だけは無さそうだけど・・。
2006-08
26
01:32:00
MX TVが選んだ道
TOKYO MXが番組Blog TVをYouTubeで無料配信するというニュースが流れていました。
国内では初なんでしょうが、海外では番組どころか現在放送中の内容をストリームで全てだらだら流していることもある(CMもそのまま流れてたり)ので、実はそれほどびっくりすることでもないです。
ニュース自体ではこうした初の試みの部分とかクリエイティブ・コモンズとして配信されることに注目されていましたが、僕が面白いと思ったのは、YouTubeに対してあくまで一ユーザーとして投稿するに過ぎない、という点です。
TOKYO MXが自社番組をYouTubeで配信,1ユーザーとして投稿
つまり別にYouTubeに対して提携の申し入れをしたわけでもなく、「勝手に」使っているだけなんですね。
これはある意味重大な発想の転換といえるかも知れません。
例えばYouTube似のサービスを狙ったフジテレビは自前で「ワッチミー!TV」というサイトを開設しました。つまり自前でインフラからサービスから用意することを選択したわけですが、MXは既にあるインフラを生かしてただ利用することを選択したのです。
つまり、どちらも志向としては流行のCGMだとか動画サービスでありつつも、いわゆるSaas(Software As A Service)的なアプローチと従来的なソフト提供の発想に分かれた、とも言えるでしょう。
もちろん両社の狙いは全く別物なので方法論も当然にして分かれたと言えるとも思いますが、一方でこれからのネットサービスの抜本的で極端な二つの方向性を示したとも言えるんじゃないでしょうか。
ネットサービスを提供する、ということを考えた場合に、自前で設備投資を行いデータやストレージを管理するような従来型の方向と共に、そうした既存のWEBサービスを如何に流用して新たな付加価値を付けていくかを想定する側です。
この両者は「持てるもの」と「持てない(持たない)もの」とも言えるし、「パーツを提供するもの」と「パーツを組み上げて完成品を提供するもの」であるかも知れない。または「サービサー」と「サービスそのもの」かも知れません。
どちらが主導権を握るかではなくて、例えば必ずしもデータを持つものが強いとも限らないでしょう。
WEBサービスが今後より多様化と詳細化していけば、より複雑なマッシュアップから、それこそ元のサービスからも想像もされなかったサービスが生み出される可能性があります。
認証、決済、ストレージ、デスクトップ、ワークフロー、IMなどなど。既に生まれてきているこれらのサービスはまだ全てがWEBサービス化されているとは思わないし、こなれているとも言えないでしょう。しかし近い将来より洗練化された後には、現在ネットサービスとひとくくりにされている業界もより細分化と分業化、そして垂直化されていくように思います。
Saasの行く末は、実は「持つことを捨てた」先にあるかも知れません。
2006-08
24
22:50:00
「スポンサー付きブログは何が問題なのか?」の記事を読んで
FPNに先日上げられた表題記事。
僕の言葉だと「偽口コミ記事」なんですが、このような大手サイトでこの問題が取り上げられたのは初めてじゃないかな。
スポンサー付きブログは何が問題なのか?
なるほど。金銭だけでなく、物品を提供してもらうモニター・ブログなるものもあるんですね。また広告であることを読者に公表しない「ステルス・マーケティング」なる言葉があり、アメリカでは既に問題化していると。
紹介されているCampusPark(ナレッジパーク)のポリシーはブロゴスフィアの特質を確実に見切れていると思います。
女子大生セグメントではステルスマーケは無意味
① 商品提供を受けているということをきちんとユーザーに伝えます。 ② その上で使用していること、使用感などをユーザーに正確に報告していきます。 ③ 無理に褒めたりすることなく、モニター日誌的な内容にします。 控えめな内容でもウソがないのは重要です。またモデルたちが不満なく使い続けてくれているということで安心感と信頼感を与えることができます。④ 逆にモデルが気に入らなかった際にはすぐに使用を打ち切る。実はこの④がとても重要で、これを徹底するかどうかで評判が大きく変わってきます。当社でもクライアント社の商品をお預かりして、ブログに掲載する際、この4点をご協力いただくようお伝えしております
素晴らしい!
このような原則は女子大生セグメントに限らない話なわけで、現在においても将来においても「(潜在)顧客に嘘をつかない」などというのは、企業論理としては然るべき選択でしょう。
press@blogやブログルポのようなステルス・マーケティング会社が旗振り役を務めているのもどうかとも思いますが、それと同時にこのような行為に何の罪悪感も問題意識も持たない広告主も全くの同罪です。
広告主も最近ではNTTドコモ、ビクターエンタテインメントやBUFFALOなど名前も通った比較的大企業も登場するようになっています(前に記事にしたSixApartなんてのもありましたね)。
「客に嘘をついている」認識がそもそも無いのか、それともばれる訳が無いととぼけているのか。
本当のところは分かりませんが、アメリカと同じく日本でもこのような偽口コミ記事やステルス・マーケティングへの理解は徐々に浸透していくかと思います。
そうなった時に、今広告を次々打っているこれら企業はどのような衆目にさらされることになるのでしょうね。ならば、今現在どのような企業からの広告が入っているのか知っておくことは将来の企業選別のためにも重要なことかも知れません。
彼らにその自覚があるのかないのかは分かりませんが・・。
果たして潜在・顕在問わず顧客とどのような姿勢で向き合っていけるのか、その真価が今問われています。
そしてこの意識こそが現代における「マーケティング2.0」に繋がっているんじゃないかと思うのです。
参考:
換金可能な口コミとは?
はてなとGREEが「口コミ広告」だって
SixApartまでもが魔の手に落ちた
P.S.
ところで、こうした企業に騙されないために、敢えてpress@blogに登録してみるのも一つの手です。
使い捨てメールアドレスがあれば簡単に登録して、新規広告依頼を見ることができます。
どんな企業が騙し広告を打とうとしているのか、分かって面白いですよ。
P.S. その2
press@blogの最近の依頼例ですが、
【今回は新しい審査方法を導入します!】
・1,000円/1ブログ もしくは 50円/1ブログ(先着500名様+抽選500名様)
先着枠、抽選枠に関わらず魅力的な記事だと弊社が判断させて頂いた100名様には1,000円を、それ以外の900名様には50円をお支払いたします。
*大変申し訳御座いませんが現時点において、弊社が魅力的な記事と判断する判断基準は公開しておりません。
先着順とかじゃなくて、尻尾の振り方を広告主が気に入った記事にだけ支払うようにするみたいですよ。
ようやく本性が出てきたのかな?(笑)
2006-06
13
23:21:00
RSSアイコンは誰のものだったか
Opera Watchで知ったんですが、My RSS 管理人ブログさんでも話題になっていました。
最近かなりよく見るようになったRSS Feedアイコンですが、実はMozillaの登録商標で、Operaは以前採用を考えたものの契約締結を求められてこれに難色を示し、最新版からは採用を見送ったようです。
Microsoftが次期IE7で採用するとのニュースもありましたが、確かにそういえば契約を締結した、というような文言があったような。
たかがアイコン一つというなかれ。
アイコンだからこそこうした標準的な利用はエンドユーザーにも非常に便利なはず。
Opera社の真意もMozilla側もよく分からないものの、ちょっと釈然としないニュースです。
Operaに限らず色んなソフトで飾られているのですが、それらが契約を結んでいた・・ということはないんでしょうね。
登録商標にするのは理不尽気ままな利用を抑えるためには必要でしょうが、翻って同時にクリエイティブ・コモンズ的な利用を促せないものかどうか。
まだまだRSSなんてこれからの技術ですから、考える余地はありそうなものです。
一方でMozillaに関しては、オープンソースの旗手のようなイメージがありますが、最近ではMozilla Corporationという会社組織を発足させて収益活動を始めたり、また全体としての売り上げも7200万ドルに上る観測があるなど、単なるボランティア組織とは言い切れなくなってきています。
そんな事情も絡んでいるのかも知れません。