「スマートフォン」タグアーカイブ

2011-07
02
01:55:07
オープン化への変貌とキャリアの隠蔽体質を考える – secure.softbank.ne.jpの問題を受けて


7月になってsecure.softbank.ne.jpという一種のSSLプロキシの廃止を受けて、高木さんと徳丸さんから続けて背景説明のエントリーが発表されている。

SoftBankガラケーの致命的な脆弱性がようやく解消
ソフトバンクのゲートウェイ型SSLの脆弱性を振り返る

簡単に言えばこのSSLプロキシの廃止は重大なセキュリティリスクを回避するために絶対的に必要だったと言うことなのだが、詳細はぜひ上記を参照して欲しい。

正直に言うと、この高木さんとソフトバンクモバイル宮川氏のやり取りの前に少しきっかけに関わったので興味を持ってみていたのだが、当初は発端となったアプリ側でのCookieの取り扱いにくさ以上の感触を得ていなかった。
それが違うなと思い直したのは両名が7月を前に盛り上がりだしてからで(笑)、それが同一生成元ポリシーに関わる問題であろうことはその後すぐ気付いた。
しかし実は水面下では、端末のJavaScriptを調整してsecure.softbank.ne.jpでの挙動のみ変更したいたことなどは今回のエントリーで始めて知った次第だ。
アクロバティックな対応だなと思うし、非常に感じるのはこれまで閉塞した世界でなら何も考えずとも良かった問題がJavaScriptやあるいは通信路の解放などといった「オープン化」によって大きく揺らいで行くであろう未来の姿だ。

先のエントリーで徳丸氏は以下のように述べている。

この事例から言えることは、(ガラパゴスと表現されることもある)日本の携帯Web独自の仕様というのものが非常にきわどく、もろいものだということです。

 

携帯Webの仕様がオープンにならないことも問題です。私は前述のJavaScript等の仕様を調べるために、公開されている仕様書だけでは十分でないために、実機での試行錯誤が必要でした。携帯Webの安全性確保のため、開発者やセキュリティ研究者に向けた十分な情報開示を希望します。

僕も全く同意見だ。
そもそもの問題はあまりに日本のケータイWEBがガラパゴスと言われるような独自進化をし、それはクローズドだったからまだよかったものの、ここへ来てスマートフォンに始まり、JavaScriptなどブラウザがリッチ化しOSはAndroidなどよりオープンなもの(逆に言えばキャリアやメーカーが手を加えにくい) となり、また通信路はWi-Fiや定められた端末しか繋げられない閉塞したものではなくPCなどと同居するよりオープンなものへと変貌しつつある。
日本のケータイシーンはただ端末がガラケーからスマートフォンへ置き換えられているだけではない。技術的な観点からすると「一般的なインターネット」へ変貌つつある。

問題はそうした急速な変化の中で果たしてキャリアはこうした旧世代の脆い仕様との乖離に伴う脆弱性に正しく対応可能なのか、ということだ。

少し古い話になるのだが、実は半年ほど前個人的に一ユーザーとして各キャリアに以下のような質問を行ってみた。

1. 具体例は示しませんが、近年携帯電話やスマートフォンに関して、セキュリティ上の脆弱性がネットなどで指摘されることが多くなってきました。
この1年間において御社にて脆弱性が発覚または発見しこれを修正などの対策をされた実績がありますか。ある場合、もし宜しければ具体例をお教え下さい。
2. 1のケースに関わらず、一般論で結構なのですが御社では脆弱性が発覚した場合修正し対応なさいますか。対応する/しないの判断基準はどの点だと認識していらっしゃいますか。
3. その場合、脆弱性があった旨ユーザーに情報を開示されますか。
4. 御社にてこうした脆弱性対応のためのポリシーを策定し運用されていらっしゃいますか。またそれは公開されユーザーへ周知されていらっしゃいますか。

各社様々経緯があり返答に時間もかかり結局一ヶ月近くかかった覚えがあるのだが、簡単にまとめると各社の回答は以下のようなものだった。

質問事項 脆弱性が発覚または発見しこれを修正などの対策をされた実績はあるか 脆弱性が発覚した場合修正し対応するか。対応する/しないの判断基準はどの点だと認識しているか 脆弱性があった旨ユーザーに情報を開示するか 脆弱性対応のためのポリシーを策定し運用しているか。またそれは公開されユーザーへ周知されているか
ドコモ 特に回答無し – ウィルス対策、パターン更新などの対策を行っている
– 対策の判断基準は脆弱性の程度や影響などを総合的に判断
– お客様にお伝えできる情報は弊社ウェブサイト等にて公開させていただきますことをご了承ください 特に回答無し
au – 脆弱性事例はあり(最近の例を例示) – システムに脆弱性があることについて事実確認されアップデートによって脆弱性が解消できることが判明した場合には必ずWEBサイトで告知を実施した上でアップデート対応を実施する – セキュリティに関わる問題については悪用される危険性があるため詳細な内容については公表しない。但し該当ユーザーについては個別に周知している 特に回答無し
ソフトバンク 弊社の機密事項に関するものとなるで社外への情報開示はWEBサイトで公開している内容のみでそれ以外は答えられない
イーモバイル 特に回答無し 特に回答無し – お客様に影響を及ぼす問題が発見された場合には、すみやかに情報を開示し対策を実施することとしています。
情報の開示方法は、弊社ホームページ上に掲載するケースや、
個別にご連絡する場合など案件によって最適な方法で実施いたします。
特に回答無し

 

多少の違いはあるが、どれも判で押したような特に具体性のない内容であることは間違いないだろう。
注目すべきはどこのキャリアも回答には数週間から一ヶ月かかっている、つまりあらかじめ想定している内容ではなく、 社内調整した結果の回答であったのだろう。それは脆弱性ポリシーの有無の質問に対していずれも明確な回答がなかったことからも察しが付く。
つまりは各社とも今回のような脆弱性への対処については明確な社内規定やルールがあり運用されている訳ではなく、発覚した場合のケースバイケースということなのではないだろうか。
これは一言で言って常に対処が後手に回り対処療法に陥りやすい危険な兆候とも言えるだろう。

「フルディスクロージャ」という言葉がある。これは「脆弱性情報を隠蔽しこれを知り得ている一部の悪意あるユーザーに悪用されるよりは、脆弱性情報を発見したらすぐに広くオープンにして全てのユーザーに完全に周知した方が安全だ」という考え方だ。
これはこれで極端な考え方で、例えば0Dayアタックと呼ばれるような一般ユーザーにこのような脆弱性から守る術を持たないうちから攻撃されるリスクが十分あるからだ。
そこまで極端なフルディスクロージャーは近年では採用されることは少ないが、しかし一方で上記のようなキャリアの態度というのは、これまた極端な「隠蔽体質」と言われても仕方ないだろう。

しかし実はこのフルディスクロージャーの考え方には、インターネット黎明期に脆弱性の隠蔽が頻繁に行われ、その結果被害が拡大した結果、反省と反発からの一種の極論から生まれたという背景がある。

キャリアが理解しているかどうかは分からない。しかし僕にはこれまでのキャリアは閉塞網と完全に制御された端末でのうのうと暮らしてきた「井の中の蛙」に見える。
スマートフォンの伸長は歴史の針を一気に進め、蛙を大海へ叩き込んだ、とも言えるだろう。
彼らが今後暮らさなければならない「本当のインターネット」の大海では、脆弱性情報は共有され適切に管理され、インターネット全体の安全性のバランスを取る仕組みと常識感が既に熟成されている。それはインターネットの巨大なプレーヤーとしてはほぼ責務と言っていい。 だがそんな「本当のインターネットでの常識」に付いていけるだけの力を身に付けられているだろうか。僕は甚だ疑問だ。

キャリア各社は今後スマートフォンへ軸足を移し、また「普通のインターネット」を提供したいと発言している。一方で各キャリア毎に課金・認証の仕組みを導入しようとしており、ドコモはiモードを、auはau one IDをすでにAndroidに組み込んでいるようだ。
けれど彼らは本当にそれらがインターネットの大海でどういう意味を持つか理解して実現できるだろうか。
僕はこうした脆弱性ポリシーや、インターネットでは当たり前の技術情報の周知1つ出来ていない現状では結局同じことを繰り返し、更に酷いセキュリティ問題を繰り広げる未来としか思えないのだ。

 

2011-05
28
03:14:16
ドコモもauも「これまでのケータイネットはインターネットではなかった」と言い出した背景


ここしばらくキャリア各社の新製品発表なども続き、その中で時あたかもドコモ・auで立て続けに同じような興味深い発言が続いた。

ネットの大海原に出るための「再定義」――ドコモ伊倉氏に聞くスマートフォン時代の“パラダイムシフト”戦略(後編) (3/3)

では、なぜキャリアがスマートフォンを推進しているのかというと、まずフィーチャーフォンの垂直統合のモデルから、そうならないところに移ることが重要である、ということがあります。それをドコモが積極的にやることによって、インターネットの世界や新しい世界をきっちりと理解し、その中でクラウドを意識して、サービスの設計をする。将来的にクラウド系のサービスをやる前提として、スマートフォンを推進しなければならない。

【WIRELESS JAPAN 2011】 KDDI田中社長、「なんちゃって」から「真のインターネット」へ

「この10年は、携帯電話の10年だった。また3Gと定額の時代でもあり、その中で、なんとか(パソコン向けの)インターネットの価値を小さなデバイスに取り込む、『なんちゃってインターネット』の時代だった。非常に良い時代だったと思う」と表現した

微妙にニュアンスは異なるが、ともに「もう携帯電話に独自ネットを閉じ込められない」危機感を有しているのがよく分かる。

キャリアから見た場合には見方が異なっていると思うのだが、この10年は携帯電話のCPUなど性能の問題で「なんちゃってにせざるを得なかった」という意見のようだ。
しかし当然理解されることとして、日本のガラケーは既に何年も前からスマートフォンだったという人もいるように(僕はそう思わないが)、またフルブラウザはもう5年以上も前から登場しているし海外ではスマートフォンはやはり5年も前から普通に使われていたことから考えて、単にここに来て「各キャリアが従来の携帯網ビジネスを手放さなくざるをえなくなった」一種の敗北宣言と捉えられよう。

日本のキャリアがこれほどまでに垂直統合モデルによって過分な利益を享受しモバイルECをここまで発展させられたのは、これまでも何度か書いている通り「閉塞された携帯網」でのみネット接続を許し、その中でのみコンテンツの利用をユーザーに許し囲い込んできたからだ。
まさしく「なんちゃってインターネット」であったわけだ。

参考:
iモードはダイヤルQ2から始まった
“ガラパゴス”の定義とは


約1年前に「SIMロック解除よりもアクセスポイントの解放こそが有効だ」という記事を書いた。そこではSIMロック「だけ」ではなく、閉塞した携帯網ではなく、インターネットへ開かれたアクセスポイントの解放が必要だと書いた。実のところ、こうしたコンテンツを囲い込む閉塞した携帯網でビジネスを続けてきたのは日本のキャリアだけであり、だからこそ寡占状態を生み出せて成功もしたのだが、世界的にはこうした垂直統合の名の下の囲い込みビジネスは珍しい。他国ではそもそも携帯網とはインターネットへ直結されている、携帯網とそれ以外の違いはなかったからだ。

では従来の携帯網をそのままスマートフォンに適用すればよいかというとそれも難しい。モバイルECを支えているケータイID(端末ID)はセキュリティ的には非常に脆弱であり、閉塞した携帯網でしか機能できない。
またもともとスマートフォントは、キャリアが企画して作り上げたものではない、いうなれば海外直輸入の「黒船」であるのでそうしたビジネスモデルが構築できない。

そこをどうするかを各キャリアは今必死に考えているところであり、それを示すのが上記の記事でもあるわけだ。
そして長期的に見れば、各社とも認めているとおりこのビジネスは衰退せざるを得ないだろう。そして否定はしているものの、各キャリアはやはり「土管屋」として、これまでのようなコンテンツビジネスからは市場からは追い出され回線費用のみで稼がざるを得なくなっていくだろう。
それがこうした弱気さともあるいは前向きとも捉えられる発言の背景なのだと思う。

では今後誰がケータイやスマートフォンのコンテンツ市場を担っていくのか。
それこそまさに「本当のインターネット」の世界が決めていくことであろう。これはここに来てようやく日本のケータイがインターネットに繋がりつつあるのだということだ。
これからのケータイネットにおいても、少なくとも現在主流のYahooなどのポータル勢やまたゲームを中心にしたSNS勢、またはFacebook、Googleといった海外勢が多くを担っていくことになるだろう。

では果たしてこれまで各キャリアと組むことで謳歌してきたコンテンツプロバイダー(C/P)各社はどうだろうか。
先日このような発表もあった。

「スマートフォンでiモード」を普及の「武器」に──ドコモ夏モデル発表

今年冬には、スマートフォン向けにiモードの課金・認証の仕組みを導入。iモード端末ユーザーが「マイメニュー」をそのまま引き継ぎ、iモード公式サイトコンテンツをスマートフォンでも利用できるようにする

さもあらん、という感じだが、このiモードコンテンツのスマートフォン対応というのが何かはよく分からない。そもそもコンテンツとしてはスマートフォンへ完全に作り替えなければならないのでこれまでのケータイ向けノウハウは全く役に立たないだろうし、また課金などの仕組みもiモードから移行させるのだろうが、これがうまく行くのか(セキュリティ的にも)よくわからない。
実のところ、個人的にはこれはドコモが主体で行いたいと考えているのではないだろうと思っている。つまり売り上げ低下の激しい従来のC/Pからの激しい追求・要望があった故ではないか。
ではうまくいくだろうか。
一つ思うのは「檻の中で飼われたライオンは野生では生きられない」ということだ。課金の仕組みもお仕着せのユーザー導線も何もないところから競争を勝ち上ってきた「真インターネット」組に太刀打ちできるとは到底思えないのだ。

キャリアが望もうと望むまいと、あるいは如何に抵抗しようと徐々に「土管屋」へ近づくのは時間の問題だ。つまり焦点は既に土管屋にはなく、果たして(主に海外)メーカーがまたは他のサービス事業者がどのような施策を打ち出しつつあるかに注目した方がよい。
二年後、恐らく日本の携帯業界は今とは全く別の力関係が存在していることだろう。

2010-12
28
17:26:13
2011年の展望ベスト10を僕も考えてみた


年末だなぁ。ってのはやけにテレビが面白くて感じることが多いですよね。

ということでふと気が向いたので僕もちょっと来年2011年(あるいはそれ以降?)に起こりそうな変化というか展望についてちょっと考えてみました。予想と言うほどでもないしもちろん予言でもなく、僕自身が期待している分野の話と言うことで。
因みにモバイル・IT混在です。 Continue reading

2010-11
23
00:55:15
ガラケー機能は須くクラウドを目指せ


IS01がAndroid1.6からバージョンアップされないことになってちょっとしたお祭りになった。
そもそも0円端末/8円運用が注目されていた矢先の発表で余計に注目を集めることになったことだろう。
しかし0円で買った人はともかく、発売直後にそれなりの価格で買った人も大勢いたはずで、2.1への移行に期待していたとしたらそちらの方がよほどショックなことだっただろう。

OSバージョンアップが出来ない、という残念な決定は別に国内メーカーに限らず、HTCでもMotorolaでも実は海外勢でもあることだ。ソニエリのXperiaが1.6から2.1へのアップグレードに半年ほどかかりユーザーをヤキモキさせたのも記憶に新しいところだろう。

こうした理由は単純に新しい今後のOSの求める性能や機能などが原因でそのハードウェアでは対応できないという理由が大半だとは思うが、一方で日本メーカーには今後更なる足枷となる原因が潜んでいるとも思う。それが「ガラケー機能」の搭載だ。
一般にこれまでキャリア各社は「始めにハードありき」のサービス展開を目指してきたと言える。着うたもそうだし、また「ガラケースマートフォン」の標準機能となりつつある、おサイフケータイ・ワンセグ・赤外線通信も当然そうだ。
しかしその前提はスマートフォンの登場と浸透で徐々に崩れ去ろうとしている。
OSと開発環境はGoogleが準備し、Android端末における基本的なハードウェアスペックの範疇のようなものも国際的に熟成されつつありこれを外れる調達と製造のコストは馬鹿にならなくなるだろう。
その上上記のような「最新OSへの対応速度」というものが端末やメーカー/キャリアの魅力に付加されるようにもなってきた。
当然特殊なハードウェアを国内機に限って使い続ける限り国際調達力はつかないし、ハードウェアと最新OSに合わせたドライバー・アプリ開発は製品開発サイクルの冗長化つまり競争力の阻害を招くだろう。

ルールは変わった。ならば対応もそれに応じて変わらなければならない。
そこで僕の考えはこうだ。ガラケー機能は今後如何にハードウェアから脱却できるかが今後も生き残れるかどうかの鍵となる。

おサイフケータイ・ワンセグ・赤外線機能をクラウドに

例えばおサイフケータイ。既報の通り、海外勢では同等の機能を目指してNFCにより近接無線通信を行うことになるだろう。またハードウェア的にも日本のように端末内部にFeliCaのようなハードを仕込むのではなく、SIMカードに内蔵させる方向であるらしい。Androidではすでに次期バーションでの採用が決定しており、またiPhoneでも同様の対応がされると聞く。
おサイフケータイの機種変更時の煩わしさは誰もが経験して評判も悪いところだが、それは端末本体に機密情報を格納するという方法を取っているからだ。これがSIMカードに変われば理論上は単にSIMを入れ替えるだけでおサイフケータイ機能も含めた機種変更が行える。よくよく考えるまでもなくこちらの方がメーカーにとってもユーザーにとっても合理的だし日本では何故その方法が取られなかったのか非常に不思議だ(というか、恐らく単純にFeliCaを売りたかった都合なのだろう)。
この場合端末にとってはSIMカードとのインターフェースさえ定義されていればいい。そしてそれは恐らくOSが吸収することになるだろう。機種ごとのドライバーなどは必要なく、あとはおサイフケータイを利用するアプリのみが開発され続ければよい。
もちろんNFCをベースとしたビジネスモデルがどうなるのか、どのような普及をするのかはこれからの課題だ。
しかし例えば一例を挙げれば、海外ではすでにこのようなサービスも登場しつつある。

Squareはおサイフケータイと闘うことになるのだろうか

簡単に言えばこれはおサイフ機能をローカルからアプリそしてネット側へ移行しようという発想だ。そしてこれらのビジネスモデルが世界を席巻し始めた時、iDやEdy、Suicaなどが如何に日本で普及していようと果たしてそれに抗い続けることは可能だろうか。
日本のおサイフケータイはほとんどがローカル機器での通信にて取引を完結させる発想を持っている。もちろんよい面もある(プライバシー保護など)が逆に言えばそれをすべてクラウドで完結させるサービスが登場すればそれほどの競争力を保ち得ないのではないかと思う。
オフィス製品や大規模なERP製品が今まさに徐々にクラウドサービスに吸収されつつあるように同じことが起こりえるのではないか。
その足かせとなるのがやはりハードウェア依存ということだ。ここから如何に脱却しネットワークへ主軸を移し端末依存を止めキャリアやメーカーの壁を脱却しない限り、そもそもおサイフケータイの各サービスは生き残れるかどうかの瀬戸際に立たされることだろう。

ワンセグについて、実は理論的には最も対応は簡単だ。ワンセグ放送のIP再送信を認めればよいだけだ。そしてそれを再生できるアプリを搭載する(マーケットから自由にダウンロードできる)だけだ。
そもそもワンセグ放送は携帯キャリアというよりは総務省と放送業界の強力な後押しで始まったに過ぎない。そしてデジタル放送始めIP再送信を阻んでいるのは通信と放送の分離政策および著作権行政だ。(放送法上一部の免許では特定地域にしか放送できない、などの制約がありボーダーレスなIP通信と馴染んでいない)
この問題はいつも多数の受益権者が絡みなかなか進展しないが、例えば既に海外のテレビ局が次々と行っているようにオン・デマンド放送を、しかも海外拠点から日本向けに行う企業が出てきたら果たしてどうなるだろう。インターネットには国境は無くまた日本の電波法・放送法を盾に海外の企業へ影響力を及ぼすのは国際司法上かなり無理があるだろう。
とは言え必ずしも悲観すべき状態ではなく各種実証実験なども細々とではあるが行われているようだが、大きな判断を速く下さなくてはこの分野さえ海外勢との競争に苦しむ事態に陥ることだろう。

赤外線機能に関して、逆説的だが果たして「赤外線機能が欲しい」と考えるユーザーは果たしてどれだけいるのだろうか。そう、ポイントはそこではない。ユーザーは赤外線機能ではなく、「アドレスの交換機能」が欲しいだけだ。
特別なハードウェアからの脱却という意味では、赤外線センサーを使用する必要性は全くない。例えばBluetoothなどを用いてアドレス交換を行うアプリも広く知られており、QRコード読み取りというのも一つの方法だろう。
従来のガラケーとの互換性という意味では最近のガラケーでもBluetoothは一般化しつつあり、逆にガラケーにそうしたアプリを搭載するのも一つだろう。
そしてまたAndroidやiPhoneもそうであるようにそもそものアドレス帳機能はローカルに隔離されているよりもクラウドで管理され複数の機器で共用できる方がよっぽど便利だ。この分野も単に赤外線機能などに止まらず、いかにクラウド対応を推し進められるかがポイントとなっていくだろう。そしてやはりまたそれはガラケー自身においても同様である。

キャリア依存からクラウド依存へ

何故このような極端に見える(かも知れない)サービスの再編が必要なのか。ハードウェア依存が「悪」なのか。それはスマートフォン、そもそもモバイル機器が宿命づけられている「ネットワーク親和性」故だ。
これまでキャリアがすべてのサービスを決める「牧歌的な」時代であればサービスがハードに依存していようとアプリだろうとクラウドだろうと関係なかった。しかしそうしたコントロールが行えなくなることは端末一体の訴求力をサービスやクラウド連携と言ったネットワーク指向性の高いサービスへ移行せざるを得ないことになる。でなければ既に述べたようにハードが足枷になり競争力の低下とサービス品質の低下を招くだけだ。
「日本発」のこれら「特異な」サービスは遠からず市場からの撤退を迫られることだろう。実際、例えば着うた/着うたフルはスマートフォンの浸透に伴い徐々にそのプレゼンスを無くしていくことだろう。それを見越してかLISMOなどのサービスはアプリとして再編されだしているように思うが、それがAndroidマーケットでの楽曲販売やAmazonのDRMフリーサービスあるいはiTunesStoreなどとどこまで同じ土俵で戦えるかはまだ未知数だ。何しろLISMOなどはそのキャリアでしか使えないのだから。

それを防ぎたいのであるなら、如何にこれまでの端末・回線・サービスの不可分一体サービスをクラウドへのみに移行していけるかにすべてはかかっているのだと思う。
だが果たしてこれまでの既得権を守りたいだけのキャリアや業界がそれを理解できるか。成功体験に浸りすぎた業界が「イノベーションのジレンマ」を自力で克服できるだろうか。
もしかするとようやく理解できた時には、既に日本としてのメリットは何もないサービスばかりが日本国内を席巻した後かも知れない。

2010-11
13
20:47:15
SH-03C/IS03/003SHのスペックと保有コストを比較してみる


各キャリアから2010-2011冬春モデルの発表が出そろって、皆さんどれを買うかわくわくされていることと思います。
僕も例外ではないんですが、一つ特筆すべきはSH-03C/IS03/003SHといった同一メーカーの兄弟機が一斉に主要キャリアから発売されるということ。もしかしたらこれって史上初めてのことではないでしょうか(少なくとも今世紀以降では。2Gの頃にはあったのかも知れません)。
そもそも各キャリアは独自のサービスとハード的にも強く結びついた端末を出してくるというのがこれまでの建前であったわけですがそれが一部とは言え崩れ去ろうとしつつあります。
これはあまり喜ばしい理由によるとは思わないのですが、つまりは「ガラケースマフォ」を日本キャリアのためにわざわざ作ってくれるメーカーが国内にほとんど無くなってしまい特定のメーカー(ここではシャープ)に集中してしまったこと、Androidベースのスマフォであるためベースが同じにならざるを得ないこと、がその理由でしょう。
もしその端末が気に入っていれば今度はどのキャリアにするかが今後は大いに悩ませることになるかも知れません。
(その点国際機と言われるXperiaやGalaxyシリーズ、Desireシリーズなどはうまくキャリアの棲み分けが出来ているようです)

これは一見するとキャリア毎の端末の差異が無くなりつつあり逆に選び方が難しくなったと思えるかも知れません。
そこでここでは発表資料を中心にスペック面と保有コスト面を中心にキャリア毎に比較をしてみたいと思います。
これはあくまで SH-03C/IS03/003SHでの比較ですが、場合によってはこうした差異の無くなりつつある状況でのキャリア毎の戦略を表している、とも言えるかも知れません。
なお内容の正確さには配慮したつもりですが、事実誤認などありましたら指摘いただければ幸いです。

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