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2010-12
31
11:58:17
勝手に添削 – iモードが世界制覇できなかった本当の理由


iモードが世界制覇できなかった本当の理由

事実を正しく指摘してはいるけど、「本当の理由」ではないと思う。

「事実は正しく指摘」しようよ。
結論は、元の中島氏の結論も含めて携帯関係クラスタやらそうした関連記事ではさんざん出ている指摘なので特に異議もないのだけど、その「前振り部分」の事実誤認なのか無知なのか分からないが、事実無根の記述がこんなに短いエントリーなのに三つ(数え方により四つ)もあるよ。
はてブとか読む限り、勘のいい人たちは「何かおかしくね?」とちゃんと気付いてるみたいだけど、言葉のまま信じ切っている人も多いみたいなので、きちんと添削しておく。

ガラケー端末も遙か昔からTCP/IPぐらいサポートしている

WAP1.0の前世紀ならいざ知らず、少なくともiモードはその登場時からTCP/IPベースの携帯端末だった。 小飼氏が言っているのはその10年も昔のWAP1.0と取り違えたような話だ。
というよりWAP1.0のプロトコル・ゲートウェイ的なダサイ実装が嫌だったのでそもそも独自にiモードをTCP/IPベースにして開発した、というのは有名な話だ。
この端末からゲートウェイからもちろん外部のインターネットまで通信層をTCP/IPでデザインするというというアーキテクトはその後のWAP2.0へそのまま踏襲された(つまり現在世界的に見ても『IPアドレスが割り振られない』携帯端末はまず存在しない)。
そもそもガラケーでも問題なくSSLが出来ている(完全なピア・ツー・ピアという意味)時点でTCP/IPをサポートできていないはずが 無いのだが。
なおこれはEZWebやYahoo!ケータイでも(初期にはWAP1.0な時代があったかも知れないが、そこの歴史は僕には分からない。識者の教示を求む)同じことだ。

参考: WAP2.0で何が変わったのか

別にiPhoneだからと言って「グローバルIP」とは限らない

あいまいな論の文章なので判断しにくいのだけど、小飼氏の論やツイートを見ると「iPhoneにはグローバルIPが振られ、外部からも自由にアクセスされ得る」から「終端として主導権を握れる」のが他の端末との大きな違いとなった、とも読める。つまりグローバルIPを自由に使える点が重要だったという意味だろうか(正直こうしてまとめていても僕にはよく分からない)。
仮にそうだとして、日本ではソフトバンクのいわゆる「panda-world.ne.jp」と呼ばれる「iPhone専用網」でサービスされておりここではグローバルIPが割り振られる。IPがグローバルかプライベートかは通常は分からないが、JailBreakしていれば自機のIPが把握できるアプリもある。
しかし世界的にはそんなキャリアだけではない。
例えばこちらの資料をみれば一目瞭然だ。世界的にはグローバルIPを使用するキャリア、 プライベートIPを使用するキャリア(つまりキャリアグレードNATを導入しているキャリア)が混在している。

APN Settings for iPhone 3G | The iPhone User Guide

これらの国ではiPhoneの他の機種に対する魅力は無いのだろうか。ノキアは悠々自適なビジネス環境を生きているか。そんなことは無い。
更に言えば、そもそもスマートフォン網だのガラケー網などと分かれている(アクセスポイントが分けられている)国の方が珍しいので、従来の携帯端末でもグローバルIPが割り振られる場合も同様にある。
「日本のガラパゴス現象」を主題にしているのは理解しているが、しかしその論では「海外においてもiPhoneがスマート」になっている理由付けにはならないだろう。
論理的帰結として、iPhoneはまたはスマートフォンとはそうした「外的要因」からは分離されたところにその存在意義や魅力があると考えるべきだろう。

なお僕には詳細は分からないのだが、「そもそもiモードにも外部接続を受け付ける仕組みはあるよ?」という指摘もある。

定額データ料金はiPhone以前からずっと存在している

これまたあいまいな文章なので判断しにくいが、「iPhoneは定額データ(=常時接続)が無ければこれほど浸透しなかった」は自明としても「定額データを導入したからiPhoneが浸透した」なら成り立たない。既に多くの人が理解するようにiPhone以前の何年も前からガラケーで定額データは一般的だったからだ。
今に始まった経緯では無いのだから「iPhone『だけ』を特別なものにした」論の論拠としては甚だ疑問だし、では何故ガラケー(やその他従来端末)がiPhoneになれなかったかの論としては成り立っていない。

ガラケーがiPhoneになれなかった訳もしくはキャリアがiPhoneを企画できなかった理由

このブログでは、あるいはTwitterでも散々ツイートしているし長くなる話なのでかなり簡単にまとめるが、僕自身は「肝」はいわゆる固有端末ID(uid, X-UP-SUBNO、X-JPHONE-UIDなど)をベースにしたモバイルECが想像以上に成功しそれ以外の方向性に舵を切る必然性がキャリア・メーカーともに無くなったからだと思っている。つまり「イノベーションのジレンマ」かも知れないし、中島・小飼両氏の「結論」も別に異議はない。それ故にキャリアはメーカーを飼い慣らす(実は飼い慣らしたかったのはユーザーだろうが)必要があったしメイドにもならざるを得なかった(つまり両氏の「結論」は「結果論」)、というのが本質論だと思っている。
もし興味があるのなら以下の以前のエントリーも参照して欲しい。

日本のケータイWEBはどうしてこんな仕様になったのか
結局SIMロック論議もオープンプラットフォーム構想も端末IDの話に尽きるのかも知れないなぁ
Appleは本当に垂直統合なのか – 日本の携帯キャリアとの違い
ガラケー機能は須くクラウドを目指せ

ともあれ。エンジニアたる者、事実に立脚せず思い込みだけで論陣を張るなど以ての外だし、知らないことは知らないでよいのではないか。その上で知りたいのなら(議論したいのなら)きちんと新たに学べばいいだけだ。これはネットだけでなくリアルにおいても「技術屋」としては最低限の矜持である。

ROCA,  the mere engineer.

2010-11
28
05:22:27
Appleは本当に垂直統合なのか – 日本の携帯キャリアとの違い


よく「日本の携帯キャリア構造を垂直統合と言われるがAppleこそ垂直統合ではないか」「Appleは日本のケータイ業界を参考に垂直統合戦略を組み立てた」などという人がいる。
しかし個人的には果たして日本のキャリア構造とAppleの戦略を同一視し、更にはそれを理由に日本のキャリア構造について肯定的に捉える(または言い訳に使う)論法には反対だ。
また更にはそれをして「勝てば官軍、負ければガラパゴス」とまで拡大解釈する向きもあるようだ。
ここではその「Appleこそ垂直統合・ガラパゴス」主張について反論をしてみようと思う。

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2010-11
13
20:47:15
SH-03C/IS03/003SHのスペックと保有コストを比較してみる


各キャリアから2010-2011冬春モデルの発表が出そろって、皆さんどれを買うかわくわくされていることと思います。
僕も例外ではないんですが、一つ特筆すべきはSH-03C/IS03/003SHといった同一メーカーの兄弟機が一斉に主要キャリアから発売されるということ。もしかしたらこれって史上初めてのことではないでしょうか(少なくとも今世紀以降では。2Gの頃にはあったのかも知れません)。
そもそも各キャリアは独自のサービスとハード的にも強く結びついた端末を出してくるというのがこれまでの建前であったわけですがそれが一部とは言え崩れ去ろうとしつつあります。
これはあまり喜ばしい理由によるとは思わないのですが、つまりは「ガラケースマフォ」を日本キャリアのためにわざわざ作ってくれるメーカーが国内にほとんど無くなってしまい特定のメーカー(ここではシャープ)に集中してしまったこと、Androidベースのスマフォであるためベースが同じにならざるを得ないこと、がその理由でしょう。
もしその端末が気に入っていれば今度はどのキャリアにするかが今後は大いに悩ませることになるかも知れません。
(その点国際機と言われるXperiaやGalaxyシリーズ、Desireシリーズなどはうまくキャリアの棲み分けが出来ているようです)

これは一見するとキャリア毎の端末の差異が無くなりつつあり逆に選び方が難しくなったと思えるかも知れません。
そこでここでは発表資料を中心にスペック面と保有コスト面を中心にキャリア毎に比較をしてみたいと思います。
これはあくまで SH-03C/IS03/003SHでの比較ですが、場合によってはこうした差異の無くなりつつある状況でのキャリア毎の戦略を表している、とも言えるかも知れません。
なお内容の正確さには配慮したつもりですが、事実誤認などありましたら指摘いただければ幸いです。

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2010-05
23
13:08:37
「ガラパゴス・ケータイ」と呼ばせたくない人々


時々このネタがTwitterのTLで流れてくるので。
よくスマートフォンに対して、「ガラパゴス・ケータイ」「ガラケー」と従来の日本のケータイを呼ぶべきではない、と主張する人たちに出くわすことがある。曰くその理由は「従来の日本ケータイへの蔑視だ」「語源のガラパゴスは単なる地名なので言葉として相応しくない、失礼だ」などというものだ。
しかしそうした主張に違和感を僕は感じるしそうした人々は本質論が得てして出来ていない。

「ガラパゴス」という言葉がささやかれ出したのはいつ頃からだったか。
僕もはっきりした記憶は無いが恐らく使われ出したのは三年ほど前からだったのではないか。
これもはっきりしないが、僕自身の感触では当時海外製携帯電話を国内に持ち込んで好き好きに弄っていたユーザー層が自分たちで持ち込んだ携帯を様々な制限で自由に利用させない日本の携帯環境と、かなり自由度の高い海外の環境の差にあきれて、外界と途絶したという意味で「ガラパゴス」と呼び出したのが最初ではなかったか。
元々そこには「日本国内で独自に異常進化した」といういい意味は含んでいなかったような気がするが、それは他の人々が語源の意味や「日本の携帯の進化具合は素晴らしい」と考える人々によって 後から追加されたように思う。

「ガラパゴス・ケータイ」や「ガラケー」はそういう意味では自国環境を憂いた自虐的な「蔑称」であろう。しかし何故それを使ってはいけないのか、自己規制・自粛しなければならないのか、さっぱり分からない。
何故ならそれほどまでに日本の携帯環境は非難され問題化されなければならない点を含んでいるからだ。

垂直統合モデルによる業界ぐるみのカルテルとも言える仕組みは競合他社を結果的に排除し競合の参入を阻んでいる。キャリア各社はこうしたモデルの崩壊を恐れ、結果的に自由度が低く競争が発生せず消費者に不便を強いている。
契約者識別IDに代表されるようなセキュリティやプライバシー問題の存在もある。10年の昔の時代遅れの技術が未だに購買モデルという重大な箇所に使用され続け、問題点や脆弱性を常に指摘されながらキャリア各社は頬被りをして問題解決のそぶりさえ見せない。
強制的なSIMロックやアクセスポイントを意識的に隠蔽しユーザーに自由に端末を使わせず全ての利用を自分たちの管理下に置きユーザーの利用の自由を阻害する。
など。

「ガラパゴス・ケータイ」や「ガラケー」とはこうした問題点を明確に言い表すための素晴らしい「発明」であったと今となっては感じている。まさしく如何に日本は多くの海外事情に比べて「異質で消費者を馬鹿にしているか」を示す名ワードである。
そういう思いがあるから僕は 「ガラパゴス・ケータイ」「ガラケー」を積極的に使う立場だ。

一方で「ガラパゴス・ケータイ」や「ガラケー」を使うべきでない、と訴える人々は上記をどう捉えているのだろう。
僕には知る由もないが、仮に問題点を理解せずに「蔑称は使うべきではない」という耳障りのいい話に流されているのだとしたら、ぜひ上記の問題に触れて自分でどうあるべきかもう一度考えてみて欲しい。
ガラパゴスと呼ばれる垂直統合モデルがどんな問題を引き起こしているか、拙作で恐縮だが以前こんなエントリーを上げたことがある。問題の一部かも知れないが概要は理解できるはずだ。
契約者識別IDは利用者のプライバシーを蔑ろにし今日では全く歓迎できるものではないが未だに日本の携帯業界は採用を続けている。海外ではこのような方式はほぼ採用しておらずまさしくガラパゴスな好例である。問題点については(技術的な部分が多いが)高木浩光氏の有名なエントリーに詳しい。
SIMロックやアクセスポイントの問題については数多くの問題点を指摘したエントリーがネット上にはあるので検索して欲しいが、拙作ではアクセスポイントについてこのようなエントリーを上げたことがある。

問題は上記を知りつつそれを隠し、本質を見せないようにしつつ言葉狩りに走っている人々だ。
それが誰なのか、とは言わない。しかし昨今の議論の中ではこうした問題点には全く触れずただ言葉狩りを訴えているだけに見える人も多くみかける。
それがキャリアやメーカーの人間であればある程度の理解は出来る。自分たちの立場も踏まえた上での発言であれば、ある程度のポジショントークもやむを得ない面はあるだろう(それでも健全に素直な議論をお願いしたいものだが)。
しかし一部のライターと呼ばれたり自称”ジャーナリスト”な人々についてはどうだろう。
上記のような論点を知らないのだとすれば全く持って勉強不足だし、キャリアやメーカーにおもねて「言葉狩り」に走るのだとしたら論外だ。

我々消費者としては言葉狩りに惑わされる必要はない。言葉は生き物だしここまで広まった言葉を否定する必要もない。「それが失礼だ」というのなら、何が何に対して失礼なのだろうか。消費者がキャリアやメーカーに何を気を遣う必然性があるのか。消費者とは独善的なまでに消費のための要求を行うべきなのだ。
それよりもぜひ気を付けて欲しい。本質に気付かれたくない人たちは常にいつの時代でもこうした些細な問題に目を向けさせ本質論を阻もうとすることに。
小さな問題に気を取られてより大きな問題を見誤ってはいけないことに。

2010-05
08
14:52:48
iPad 3Gは海外版+b-mobileの方がお得(かも)


聞いていたよりは二日も早くSoftbankからiPad発売の発表がされました。

日本ではソフトバンクモバイルが5月28日よりiPadを提供

んで最大の関心事だったSIMロックと各キャリアからのSIM提供については「SIMロック有り」との情報があり、もしこれが事実ならdocomoがiPad用microSIMを準備するとしても国内版ではキャリアはSoftbankしか選べないこととなります。
Softbankのサイトでは「データ無制限プランが月額2910円から」と謳っていますが、ここで冷静にコストを計算してみましょう。

まず価格一覧からは、本体価格が3G/16Gの場合割賦月額が2430円、24回払いですので総額58,320円となります。
次に月額利用料金は、ウェブ使用基本料 350円 + データ定額プランが4,410円で計4,760円です。ここから月月割1500円が24ヶ月に渡って差し引かれるので当初24ヶ月(恐らく2ヶ月目から24ヶ月)は月額2,910円となります。
つまり端末割賦と合算すると月額5,340円となります。また割賦と月月割を考えると約24ヶ月の「縛り」があるとも言えます。
別の言い方をするとiPad本体 58,320円に加えて月月割(24ヶ月縛り)込みなら2,910円がコストということになります。
なおプリペイドプラン(上限1G)も月額4,410円から用意されていますが月月割が適用されないのでこちらに価格競争力は無いと思っていいでしょうし敢えて選択する積極的な理由は通常無いでしょう。

さて問題はSIMロックがあるならばこのプランを選ぶしかない点なのですが、一方で既に一部で一般化しているように海外から個人輸入するという手もあります。
現状ではUSのアップルストアで誰か知り合いに買ってもらうか輸入代行業者を利用する必要があります。
USアップルストア直接なら3G/16G版で$629なので約55,000円。代行業者を利用する場合にはこれに10-15%程度手数料がかかるようです。すると60,000円-65,000円ぐらいではないでしょうか。
また6月以降となるようですが香港などでも発売が開始されると言うことでより手頃な価格で手に入ったり個人でも買いやすくなる可能性もあります。
更にこの海外SIMフリー版に日本通信(b-mobile)のSIMを使用する方法があり得ます。
そもそも日本通信はiPad用のmicroSIMを発売する予定は(まだ?)発表されていませんが社長の千田氏が「b-mobileのSIMでもiPadが動作した」とツイートされていましたので、誰も保証はしないものの、現状でもサイズカットするなどの方法でも動作する可能性があり、また近々何らかの対応を発表する可能性もあるでしょう。
問題は月額通信コストがSoftbankの場合の2,910円を下回るかどうかですが、b-mobile SIMは現在6ケ月利用で13,544円1年で27,088円で販売されており、 それぞれ月額では2,257円で利用可能です。
また実質縛りが6ケ月または一年と短いこともポイントです。

または、やはりdocomoが全く事情を無視してmicroSIMとデータプランだけを販売するというのも面白いシナリオですが、多分価格競争力は無いでしょうね。

こんな感じで、もしiPadを一年以上利用するのであれば(本体価格如何ではありますが)、海外版/SIMフリーを購入してb-mobile SIMで運用した方がお得な可能性が高いと考えています。
そもそもiPadは携帯電話と言うよりは単純なデータ通信端末ですのでキャリア乗り換えのスイッチングコストも低い方が有り難いわけで、また特に海外で現地のキャリアSIMを使いたいなどの場合は明らかにこちらの方がお得に思います。
あるいはiPadだけでなく他のPCなどとの利用も想定すれば、iPadはWi-Fi版にしておいて、データ通信はmifiのようなモバイルルーター+b-mobile SIMなどの組み合わせでもいいかも知れませんね。

なお追記しておくと、従来までであれば電波法により技適を通過していなかったり、していても技適マークが印刷されていない機器は国内での利用は違法だったのですが、最近総務省が省令を改正しスクリーンにソフトウェア的に技適マークが表示されればOKになったので。アップルが技適マークを表示するようにOSを変更すれば上記は問題なく利用できるようになるはずです。

ということで、Softbankはいつも通りに囲い込もうとしたと思うんですが純粋なデータ通信機器故に綻びもあって、プランや本体価格設定に失敗しているんじゃないかなあというのが個人的な感想です。
やっぱりもう既にSIMロックの囲い込みなんて、ボーダーレスな世の中では通用しにくくなっているわけですよ。

「でもすぐにでもiPad手に入れたいんだ」という層には別に無理に勧めませんが、多分そういう層はもう既に個人輸入とかしてるとも思うので (笑)、コストメリット面では流動的な点もあるので発売されるまでしばらくは様子見してじっくり自分なりの買い方を考えてみてもいいのではないでしょうか。